とりあえずお願い

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ライン ドット

ちょうどコピーが終わった頃に彼がまた戻ってきた。今度は俺の上着を持ってきてくれている。

 

「今日は本当にどうもありがとうございました。あの、これ僕の名刺です。」

「あ、どうもわざわざ。じゃあ、何かあったらまたいつでも連絡下さい。」

 

彼の名刺を受け取ると、自分の名刺を彼に渡した。部品が届いたら、また自分で交換に来ようかなって思った。その時にまた会えるかもしれない。

 

「あの部品の交換には赤坂さんが来て下さるんですか?」

「あ、はい。そのつもりです。」

 

簡単な部品の交換くらい、俺が自分でやる必要はない。今日だって、外回りの技術者にやらせればすむことだったんだけど、電話の声につられて来てしまったから、帰ったら課長に嫌味を言われた場合の言い訳を考えとかないといけない。

 

1週間後なんですよね?」

「多分その前に来られると思いますよ。メーカーから部品が届き次第、交換にお伺いしますから。」

「それじゃあ

 

首を傾げつつ、彼が携帯をチェックした。

 

「その時に今日のお礼をさせて頂けませんか?今日はこれから色々あって駄目なんですけど、来週の水曜日なら大丈夫ですから、是非なにかご馳走させて下さい。」

「いえでも。」

「お願いします。もう少しゆっくり赤坂さんとお話したいですし。」

 

うわあなにこの殺し文句?

 

結局彼とまた1週間後に会う約束をして、俺はヘラヘラ緩んだ顔のままオフィスに戻った。課長が嫌味を言いかけるのを「レポートにしときます。」って遮ると、サッサと自分のデスクに向かう。でも、パソコンのモニターを見ていても、少し俯き加減の彼の顔とか、喉から鎖骨にかけての線、シャツの下の肌、ズボンの前の膨らみ見えたところも、見えなかったところも次から次へと想像してボーっとしてしまった。

 

あ、そうだ。忘れないうちに必要な部品だけは注文しとこう。

 

ちゃっかり彼に会う口実の部品だけは忘れずに注文して、次の週の水曜日、届いた部品を持って彼の会社に出かけた。その日は歯磨きをしただけじゃなく、朝からシャワーをして、指まで突っ込んで全て綺麗に洗ってしまう。穿いてくパンツからネクタイまで、鏡の前で選びまくって、部屋の中はまるで台風でも通ったような状態。

 

だから俺、なに期待してんの?

 

ふと我に返って情けない気分にはなったものの、俺はその日の午後部品の箱を抱えると、明らかにコピー機の修理には向かない格好で、夕方遅めの時間に彼の会社に向かった。

 

正面の受付の女の子は一度見ただけの俺の顔と名前を覚えていて感心させられた。でも、彼のいるフロアの受付は、相変わらず感じが悪い。「どこの誰だよ。」って顔で見て、彼の名前を言うとやっと呼び出してくれた。

 

「コピーの修理だって。そう言っとけばいいの?うん、じゃあ。」

 

この口の利き方でよく受付が勤まるよな。

 

「修理が終わったら連絡して欲しいそうです。」

 

返事を待たずに下を向いてしまったから、俺も黙ってコピー機の置いてある部屋に向かった。

 

場所は分かってるから、わざわざ案内してもらう必要はないんだけど、彼の顔見るのを一日中楽しみにしてた俺としては「何期待してんだよ。」って言われてしまったような気にさせられた。

 

お礼させて下さい、なんて彼はもう忘れてるのかもな。

 

簡単な部品の交換を済ませて、黙って帰るのも失礼だから一応確認の電話だけは入れておこうと思ったら、バタバタ廊下に足音がした。

 

「すみません、赤坂さん。急な電話が入ってしまって

 

腕に上着とネクタイを抱えた彼が走ってきた。ちょっと髪が乱れてるのは、かなり急いで来たらしい。

 

「もう修理は済みましたから、僕はこれで失礼します。」

「え?でも、これから食事にお誘いしようと思ってたんですけど駄目ですか?」

「でも、お忙しいんじゃないですか?」

「大丈夫です。電話の件は片付けましたから。これから出られます。」

 

・・・・・・・・・・・

 

食事中は仕事の話から始まって、だんだん趣味の話で盛り上がった。好きな映画とか音楽が似てて、最近見た映画の話をしてるうちに、

 

「これから僕の部屋で一緒に飲みませんか?古い洋画のDVDとかあるんですけど。」

 

唐突に部屋に誘われてしまった。

 

これは本当にひょっとして、ひょっとしたりする?

 

お互い会社の場所が近いせいか、住んでる所もそう遠くない。俺のマンションよりは新しいと思われる彼の部屋は綺麗に片付けられていて、空き巣に荒らされた様な状態の俺の部屋とは大違いだった。

 

彼は意外と酒には強いらしく、出されたのはコクのある味わいの泡盛だった。俺もかなりのいける方だから、遠慮せずに飲み出した。彼が酔った頃に、押し倒してしまおうかなっていう計算をしつつ、自分が一杯飲む間に、彼には二杯くらい飲ませるペースでいく。

 

けど

 

(こいつザルだ。)

 

どんだけて飲ませても手元もしっかりしてるし、見た目もちっとも変わらない。

 

ただ目の周りが少し赤らんで、話をしながら時々考え込むように目を上に向けたりするのがやたらと色っぽい。

 

ふざけて頼んだらキスくらいさせてくれないかな?

 

そんなことを思いながら、

 

「河瀬さん、彼女いるんですか?」

 

って聞いてみた。

 

「え?どうしてですか?」

「いえ、きっと女の人にモテルんだろうなって思って。」

 

この間廊下の話し声を盗み聞きしてたことは黙っていた。

 

「そんな人いませんよ。だから淋しくて、今日は無理に赤坂さんを誘っちゃいました。」

 

ああまた妙な期待を抱かせる殺し文句。

 

キ、スしちゃえっ!

 

そう思って、思わず彼の方に身体を乗り出したら、

 

「赤坂さんは、男の人が好きなんですよね?」

 

って。

 

い、いきなりですか!?

 

どう返事をしようか迷ってたら、

 

「僕にも教えてくれませんか?」

 

そう言われた途端、その目線に思わず生唾が

ライン ドット

 

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