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こっそり手を握ったりしたのが恥ずかしくて、カッとなった俺が手を引き抜こうとすると、その手を握り締めたまま田宮が静かな声で言った。
「嫌だ。」
「馬鹿!離せったら。」
「嫌だよ。牧が自分から俺に触るなんて初めてだもん。すっごい嬉しい…もう絶対離さない。」
「何言ってんだよ。変なこと言うな!」
「いいよ、馬鹿でも、変でも。でも離さない。」
そう言いながら、田宮が俺の方に身体を向けると握った手に力を入れて引き寄せた。そのまま背中に回された腕が、布団から飛び出した俺の上半身を抱き締める。
「ごめん、牧。ちょっとだけ…ちょっとだけこのままでいて。」
「う…」
怒鳴りつけて、文句を言って、睨みつけて…いつもならそうするのに、なぜかそんなことしちゃいけないような気にさせられた。田宮の声が優しくて、でも切羽詰ったような、緊張したような、すごく真剣な声で、びっくりした俺は素直にその声の言う通りにしてしまう。
目を瞑ると、田宮の心臓が凄い勢いでドキドキいってるのが聞こえてきた。
変なの…。
なんかひどく安心する。頭痛が治まって、少し眠くなってきた。
そのままぼんやりした頭で、星空の下の荒野にあるはずの俺の穴のことを考えた。一人で穴を掘るよりも二人の方がいいのかもしれないって…。
「なあ、田宮…」
「う、うん。なに?」
「田宮に手伝って欲しいことあるんだ、俺。」
「え?」
「俺の穴…掘って欲しいんだ、もしいつか一緒に…」
「えっ!ええー!」
急に田宮が大声を出したから、俺の方がびっくりした。
「な、なんだよ?」
「いや、だってそんな…急にそんなこと言われても、俺、心の準備が…。」
「は?」
「つまり、そういうことは…その…もう少し大人になってからっていうか、いや、俺は嫌って言ってるんじゃなくて…その、ホント嬉しいんだけど…」
「何言ってんの?」
俺がポカンとした顔で見てると、田宮が真っ赤になったのが分かった。
「あの…あれ、えーっと、牧は何のこと言ってんの?」
「だから、穴。さっきの映画の話。」
「え?映画って…あっ、ああ…。ひょっとして…穴って、地面に開いた穴のこと?」
「他に何があるのさ?」
「その…何でもない。そうだよね、あの穴ね。ハッ、ハハッ!」
人が折角大事な話をしようと思ったのに、田宮が分けわかんないことを言い出して、一人で騒ぎ出すから俺はムッと黙り込んだ。
「ごめん、牧。俺、なんか勘違いして…その、さっきの映画面白かったよね?穴って、牧はあの場所に行ってみたいの?」
田宮が俺の頭を撫でると優しい声で聞いてくる。
暗くて狭い田宮の部屋で、そのまま田宮に抱かれてると怒る気がしなくなった。
「うん。俺、いつかあそこに行ってみたいんだ。それでうんと深く自分の穴を掘って、そこに入ってみたいんだよ。」
そんなに喋ったのは久し振りだった。暗い地面のずっと下まで降りて行って、穴の中に居たらどんな気がするだろうとか、地面の底で生まれ変われるような気がするんだってことをベラベラ話し続けた。
誰もいない穴の底なら自分自身に戻れる気がする。そう話したら、田宮が言った。
「じゃあいつか一緒に行こう。俺も牧と一緒にその穴に下りるよ。そしたら俺も、牧にちゃんと伝えられる気がする。」
「え?」
「今はまだ言えないけど、その時になったら言うよ。」
真っ暗な小さい部屋が、急に穴の底みたいに思えてきた。安全で誰にも見つからない俺だけの場所。いつものように田宮が俺の横にいて、他には誰もいない。
今なら言えると思った。
「いつも…俺のこと待っててくれてありがとう。」
本当は田宮のことが嫌いなんじゃないとか、一緒にいてくれるとホッとするとか、離れると淋しくて不安だなんてこと、どうしても言えなかった俺は、それだけ小さな声で囁いた。
「うん…。これからもずっと待ってる。牧のことずっと待ってるからね。」
すうっと息を吸い込むと布団の中の田宮の匂いがして、俺はそのまま目を閉じると田宮に身体を預けたまま、深い眠りに落ちていった。
夢の中で俺は田宮に笑いかける。なぜか田宮は照れたような困ったような顔をして、俺になにか言っていた。
俺の手をしっかり握ったまま。
そして俺もその手を握り返す。もうその手を離しちゃいけないんだって、俺にも分かっているから。
季節外れの花火をしようぜ
震えながら 笑いながら
気休めだけど どんなに今が
悲しくたって 永遠じゃない
君が涙で描く明日は
相変わらず 頼りないから
不安な夜は そばにいよう
涙がただ止まるように
忘れていた 気持ちはここにある
分からない事ばかりと君が
迷ってしまう 探してしまう
こんなに星がきれいな夜も
あるって事を 思い出せるさ
僕が夢を描く明日も
相変わらず 頼りないけど
長い夜に輝く星 震える手に白い息
悲しい気持ちは 冬の空へ
季節はずれの花火をしよう
震えながら 笑いながら
優しい気持ちに 僕らなれるはずさ*
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*「花火」copyright byつばき
後書き
えーっと、エロもない上に、暗い話を最後まで読んで下さってありがとうございました。しかもストーリーがかなり説明不足…書ききれませんでしたっ(涙)。最後に引用した歌詞は、私の大好きな曲「花火」からです。気分が落ち込んだ時に、この曲を聴きながら泣くという…(暗っ)。こんな名曲をズーズーしく私の駄文にくっつけてしまって、ファンの方、大変申し訳ございません。でも、これ一応、私の一色さんへのラブレターでございます(こんなの貰っても超迷惑…)。もちろん御本人に送りつけたりは致しません。ただ遠くから密かに愛を送っております(笑)。こんな曲が作れるなんて、ホントいい男だよね、一色さん〜。
それからしばらく前の映画ですが、この短編に使わせて貰ったのはHolesです。この映画に出てたShia LaBeouf君は、現在DreamWorks一押しの若手。レイダーズの続編にも出演が決まってるらしいです。最近Transformersにも出てた。そのHolesのストーリーとこの短編には何の関係もありません。穴だけ拝借(笑)。Holesはディズニー映画だけど、サスペンス仕立てで、まだ観てなかったら、面白いから観てみて損はないと思います(^_^)