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目の前でにこやかに笑う相手の名刺の名前は上原真治。俺にわざわざ原稿を依頼に来てくれた、今時とっても貴重な編集者。なのは分かってるけど、何となく好きになれない相手だった。こういう笑顔が売りって感じの編集者に限って、原稿のためならなんでもやるっていうふてぶてしいのが多い。
「僕としては是非先生にお願いしたいんですよね。」
「はあ…でも…俺、こういうの良く分かんないし…。」
「大丈夫ですって。先生のお書きになる女性をそのまま男性に変えていただければいいんですから。」
俺はしがないエロ書き作家。大学の時からずーっとオタク丸出しで、その手の話を書いてるうちにとうとう卒業してからも、それを仕事にすることになった。だけど近頃なんでもネットでお手軽に手に入るおかげで、俺の原稿に金を払ってくれる出版社なんてない。今更真面目に就職探すのも面倒で、カップ麺1個で日々食いつなぐ生活がしばらく続いていた。
「ほら、先生の書く女の子って、若くて素直で可愛くて童顔、そのくせ巨乳でエッチですよね。」
「はあ、まあ…ですね。」
「だからそれをそのまま、若くて素直で可愛くて童顔、だけど巨根でエッチな男の子にしていただければいいんです。」
そんなメチャクチャなと思いつつも、俺は生返事をしながら目の前の焼肉に食いついた。
今度いつこんなん食えるか分からんねーし。奢ってくれるっていうんだから、食った方が勝ち。
「もし、お引き受け頂ければ、ここに。」
って言葉を切ると、上原が四角い封筒をテーブルの上に置いた。俺が思わず顔を上げると、にっこり微笑む。
「些少ですがお礼です。原稿が上がればもう少しお渡しできると思いますが?」
口の中の肉を噛み切りつつ、俺は素早く頭の中で計算を始めた。
渡された原稿料はなんと10万。1本の原稿料としちゃこの世界じゃ破格の値段だ。これだけあれば家賃だって払える。しかも書き上げたらまた金が貰えるなんて、美味しすぎる。
依頼されたのはホモ雑誌向けのエロ話。
とは言え、やってることはそう変わるわけじゃないよな?こうなりゃなんだって書いてやる。
と、あまりにも旨い話に裏がありそうな気はしたものの、俺は結局その話を引き受けることにした。上原の言った通り、まず男女の絡みでいつも通り書いてから、女の方を男に変えて巨乳っていうとこを巨根に摩り替えてみた。
けど、自分でも首を捻るくらい面白くもなんともない。
(本当にこんなんでいいのかな?)
原稿が出来たって言うと、俺のアパートまで嬉しそうにやって来た上原は、案の定俺が渡した原稿を読みながら、だんだん眉が寄ってきた。最後まで一応読んでから大きな溜息を吐く。
「先生、なんていうか…これじゃちょっと使えませんねえ。」
やっぱりね…。そもそも俺にこんなん頼む方が間違ってるし。でも金返せって言われても、もう綺麗さっぱり使っちゃったけど…。
上原がテーブルの向こうから俺の方に周り込んでくると、隣に座って原稿を指した。
「ほら、ここのところ。いつもなら先生が丁寧におっぱいの描写をするとこですよね?大きさ、手触り、乳首の色、形。それと同じことをちゃんと書いてもらわないと。」
「え?」
「だからFカップがどうのとか、いつも書いてますよね?」
「でもその…アレにカップのサイズなんてないし…。」
「そんなの分かってますよ。」
そう言うと上原がジッと俺の股間を見詰めた。
「あの…?」
「だからちゃんと長さとか太さを測って、きちんと描写して欲しいんですよね。」
「は、はああ!?」
「先生なら大丈夫ですよ。童顔だし、性格も素直そうだし、エッチなのは間違いないし。身体はもう少し鍛えたほうが良さそうだけど…。」
そう言って上原が俺の腕を軽く掴んだから、俺は思わず身体を引いて逃げた。
な、なに?何なのこの人!?
「いやっ、その…俺は普通、全然っ普通でそういうんじゃないから。」
「そういうって?」
「だから巨根とかっていうんじゃなくて、普通だから…。」
上原がにこっと笑って言った。
「とにかく原稿料はお支払いしてあるわけですから、とりあえず御自分のを活写してみて下さい。サイズは後で適当に書き換えることもできますし。ああ、そうそう。サンプルを置いていきますね。」
活写って…。脅迫だ!まるで俺が金を返せないのを見抜いてるみたいに、あの笑顔はやっぱりくせ者だった。
サンプルに置いてった雑誌を読んで怖気を震ったけど、金を返せって言われてもどうしようもない俺は、最後に使ったのはいつかも覚えていない物差しってやつを取り出してみた。
うーん。
自分のって言われても…。
手の中にポロっと出てきた俺の息子は、グタッとしていかにもやる気がなさそうだ。物差しを当ててみると情けなくて溜息が出た。
俺は中学生か?
根元を掴んで持ち上げると、右に左にプラプラ頭を振って、まるで嫌々をしてるみたいに見える。とりあえずそれを引っ張って長さを図ると、6cmって書き留めておいた。
ふーん。意外とこのままでも長さはあるもんだな。
次に太さを測ろうと思って、家にメジャーなんてものがないことに気が付いた。指で掴んでみたら、ちょうど親指と人差し指を輪にして入るくらいだったから、定規で親指の先から人差し指の先までを図ろうと思ったけど上手くいかない。しょうがないからほつれかけていたパンツの糸くずを切って、それを巻きつけてから定規で糸くずの長さを測った。
あー、情けない…。
サンプルを読んでると「ダラリとしたままのチxポにも迫力があって…」とか書いてあるけど、俺のはどう見ても迫力の欠片もない。どっちかっていうと、間抜けな感じで笑えてくる。出来損ないのマツタケ。
「こら、ちょっと元気出せ。」
自分で馬鹿な掛け声をかけておいて、俺は上原の指示通りカリの大きさも測ろうと、息子を弄繰り回した。そうやって触ってるうちに勘違いした息子がどんどん大きくなる。
あーあ。ま、いっか。勃起時のサイズも図っとかないといけないし。
13cmね。そっか、やっぱ普段の倍以上にはなるわけだ。
それにしても…巨根じゃないのは確かだよな。完璧人並み、ごく普通サイズ。サンプル読むと28cmとか書いてあるけど、そんな奴この世にいるのか?ありえねだろ?つーか、そんなんケツに入れられたら死なねー?
人事ながら、小さい方が楽だろうと俺は思うけどね。
28cm、黒光りして、先走りでヌルヌル、袋がサッカーボール並みの大きさで、針金のような剛毛が足までびっしりって…。怖えぇっ!これのどこがエロなんだ?ホラーじゃないのかよ?いや、SFか?
萎えた…。
サンプルじゃ男は何時間でも勃起したまま、ザーメンを部屋中に撒き散らすってことになってる。
それって可能なのか???
身体もマッスル、ガッチガチが基本みたいだけど、俺はラップトップさえ持ち上げられりゃそれ以上筋肉はいらないんだし。
こんなん書けねえって!
とは言え原稿料…。返せない以上は書くしかないわけで、俺は詳しく書きとめておいた自分のサイズをチマチマとパソコンに打ち込んだ。
(中学の時の身体検査思い出すな。)
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