おまけ

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ライン ドット

二度と日本に戻ることなんて無い、ずっとそう思ってた。

 

あんなに職場や家族に自分がゲイってことを隠してた敬吾が、俺を家族に紹介したいって言う。なんか感動してしまって、思わず一緒に日本に行くって言ったけど、今になって少し後悔してる。

 

敬吾のお姉さんは、ちょっと賑やか過ぎるのが玉に傷だけど、とっても良い人だ。

 

だけど、敬吾には両親もお兄さんもその家族もいる。

 

もし敬吾の家族が皆して敬吾のことを拒否したら、敬吾はどうするんだろうって、少し不安になったんだ。

 

もし家族に酷いこと言われて、それで敬吾が俺みたいに捻くれた人間になってしまったら、それでも俺達はこのままでいられるだろうか?

 

敬吾が万が一そんな風に変わってしまったら、俺達は傷付け合って別れるしかなくなるかもしれない。

 

例え敬吾が何も言わなくても、俺のせいで敬吾が家族と上手くいかなくなってしまったら、俺はきっと逆にあいつを責めてしまう。自分の罪悪感に耐えられなくて、お前が馬鹿な事考えるからだって責めてしまう。

 

ずっと俺は1人でやってきた。誰かに心を開いたり、ましてや頼るなんてことしたこともなかった。ずっとそうやって来たのに

 

もし敬吾が居なくなったら俺は平気でいられるだろうか?また1人に戻れるんだろうか?

 

もうその自信が無い。

 

敬吾を失ったらとても平気じゃいられない。あいつと居る時だけ、俺は俺自身でいられる。身構える必要もなく、気持ちを偽ってゲームを続ける必要も無い。

 

優しい敬吾。

 

優しくて、とても強い

 

泣き虫だけど、怖がりだけど、本当は敬吾の方が俺よりずっと強い。自分では気づいてないけど、あいつは何があっても絶対ぶっ壊れたりしない強さを持ってる。

 

強いからこそ人を愛せる。あんなに真っ直ぐに、自分が傷つく事を恐れないで俺に手を伸ばす。

 

(敬吾は愛に溢れている。)

 

初めて会った時からずっとそう感じてた。あいつの笑顔から愛が溢れ出す。誰かを愛したくて、溢れ出る気持ちを押さえられないで、目の前の相手に直ぐに夢中になる。

 

別に俺じゃなくても、きっと相手は誰でも良かったはずなんだ。

 

たまたまあの場であいつに声を掛けたのが俺だっただけ。本当に些細な偶然。

 

俺がずっと前に市民権を取ってたら、敬吾があの時市民権を取ろうなんて思わなかったら、俺達が出会う事なんて無かった。

 

俺と敬吾の共通点って言ったら、二人とも日本で生まれたっていうことだけ。

 

敬吾は家族みんなに愛されて、人を疑うことを知らない素直な可愛い子に育った。それは今でも一緒。見ててハラハラする。

 

俺ときたら、人を見れば泥棒だと思うことにしてるし、「良い人」には裏があるって決めてかかってる。誰かに裏切られても肩を竦めるだけ。そんなもんだろって思うだけ。

 

敬吾はそういう時は泣くんだろう。

 

そもそもよくあれだけ色んなことに泣けるもんだっていつも感心する。自分に全然関係無いことでも、TV見てたって泣く。泣くようなとこじゃなくても一人で泣いてるし。

 

そう言えば、初めて会った時も泣いてた。あのアキって奴のために

 

日本に行くのがちょっと嫌なのは、敬吾が張り切ってあいつの土産まで用意したせいもある。人の気持ちに鈍感なのがあいつの欠点。嫉妬してるなんて思われたくないけど、俺が何も言わないからって気づけよって言いたい。

 

自分がなんであいつの恋人に会いたがってるか分かってんのか?やっぱり気にしてんじゃん、あいつがどんな相手を選んだのかって。

 

こういう自分が嫌で苛々する。今まで誰と犯ったって犯られたって相手の気持ちなんてどうだってよかったのに。ましてや相手の過去なんて考えた事もなかった。病気持ってそうかどうか、暴力振るいそうなサイコかどうか、せいぜい気にするのはそれだけ。

 

だけど、結局は敬吾の気持ちが嬉しくて、俺は日本行きの飛行機に乗った。でもその瞬間からすっげえナーバスになってしまった。

 

敬吾と繋がってれば少しは収まるかと思ったけど、飛行機の中ではやりたくないって拒否されてしまう。

 

俺のパートナーとしては、敬吾は今一つその辺が食い足りない。体力が無いのは年のせいとして我慢するとしても、とにかくアレも駄目、コレは嫌って何にもさせてくれない。

 

3人でやるのなんてもう諦めたし、バイブもその他モロモロの玩具も嫌っていうから使わないし、ベットじゃないと身体が辛いっていうから床に押し倒したりってこともしない。

 

敬吾が自分からやりたい時くらいもっと気分出して誘って欲しいのに、誘い方にちっともバリエーションがなくてほんっとに詰まんない。耳元で喘ぐとか、キスするとか精々その程度。

 

箱に一杯あるんだからエロい下着でも穿いて、足開いてアソコにバイブ突っ込んで、アンアン喘いでみせて欲しいって思うけど、そう言ったら「酷い!」って泣かれた。

 

何で?

 

俺、普段はすっごい我慢してんだけど、全然分かってないよな。飛行機のトイレでやろうって言っただけで凄い拒絶反応だし。だったら普段からもうちょっとやらせろ!

 

なんて言ったらまた泣くかも。

 

日本に着いた次の日、敬吾は早速アキって奴の恋人に会いに行きたいって言い出した。アキの方は忙しくて会えないって言ってきたらしい。多分まだ敬吾に会う気になれないんだろう。恋人がいるって言ったって本当に好きで付き合ってるのかどうか怪しい。

 

だけど、こういう所が信じられないくらい鈍い敬吾は、だったらあいつの恋人の顔だけでも見たいって言い出した。

 

「そういうことしない方がいいんじゃねー?」

 

って忠告してやったのに、顔見て挨拶するだけだからって意外としつこい。勝手にすれば、とは言ったけど、だんだんムカムカしてきた。それにわざわざコンビニまで行ったのに、顔見るのが怖いのか、いつまでも外でモタモタして、俺が先に店の中に入るとやっと付いて来た。

 

(ふーん。)

 

写真で見た時も思ったけど、素直そうな大人しそうな感じがやっぱり敬吾に似てる。だけどあいつの恋人って敬吾に言われてびっくりしてた。それにあいつは自分のことをまた「アキ」って呼ばせてるらしい。

 

(可哀想に。きっと利用されてるんだ、あいつに。恋人なんて、好きだなんて、きっとちゃんと言って貰ってないんだろう。敬吾には恋人が出来たなんて見栄張ってるくせに、写真もこっそり隠し取りしたみたいだったし。)

 

一応「あの冷血動物とは別れた方がいい。」ってアドバイスしてあげたけど、敬吾に“頭おかしい”とまで言われて、また腹が立った。俺は本当のことを言っただけで、本人だってきっと分かってるはずだ。何にも分かってないのは敬吾だけ。

 

嫉妬してる訳じゃない。ただちょっと不安なだけだ。敬吾が俺から離れてしまったらどうしようって

 

俺には、あいつみたいに直ぐ敬吾の代わりを見つけるなんて、器用な真似は出来っこない。そんなに要領のいい方じゃない。

 

その日の朝、俺は1人でマンションのバルコニーから薄汚い街並みを眺めてた。そうやってると自分でも驚いたことに、子供の頃のことを思い出した。俺はこういう街で生まれて、幼稚園まではここで暮らした。母親に手を引かれて通った幼稚園。祖父母に抱かれて過ごした頃。

 

あの頃は今の自分がこんな風になるなんて想像もしなかった。俺に繋がる人間を全て憎むようになるなんて。お遊戯もお芝居も勉強も、何でも得意で一生懸命やって、いつも幼稚園のお姉さん達に誉められていた。毎日毎日が楽しくて

 

あの子供はどこへ行ってしまったんだろう?

 

俺に頭を吹っ飛ばされてしまったあの子

 

ずっと日本に居たら俺は今ごろどうしてたんだろう?アメリカに留学してたんだろうか?それとももっと別の道を選んでいたんだろうか?俺は1人じゃなかったろうか?

 

…my shadow's the only one that walks beside me

my shallow heart's the only thing that's beating….*

 

しばらく頬を涙が伝うのに任せて泣いていた。俺は自分が好きじゃない。こうなりたくてこういう風になった訳じゃない。誰かに心を許したいと思う。1人は辛すぎる。

 

セラピストには、俺の憎しみを敬吾にぶつけちゃいけないって言われた。そうしてるつもりはないけど、敬吾の気持ちを素直に受け取れないことがある。誰かに心を開くのは難しい。

 

もし無防備な柔らかい心の内側をもう一度傷つけられたら、立ち直れるかどうか分からない。

 

それでも俺は敬吾のためならって思って、自分でも信じらんないくらい努力してる。あいつを失うのが怖いから。離れるなんて耐えられないから。

 

ぼんやりしてると敬吾に声を掛けられた。うるさく「どうしたの?」って聞かれるかと思ったけど、そのまま黙って抱きしめてくれた。

 

男に抱いて欲しいなんて思った事はない。正直犯られるのは全然好きじゃない。

 

こういう顔だし、身体もどうやってもデカクならないから、寄ってくる奴は大抵俺を犯りたいって奴ばっかだけど、痛いばっかでちっとも良くない。世の中アナルが良いって奴ばっかじゃないってことなんだろう。敬吾みたいに気持ち良さそうなのはちょっと羨ましいけど。

 

だけど敬吾に抱かれるのは好きだ。優しいし、何より俺に入れて興奮しちゃってるのが可愛い。アッという間に終わっちゃうから「痛い」って思う暇も無いし、その後でちゃんと俺にもやらせてくれる。

 

俺の敬吾。俺だけの可愛い敬吾。

 

あいつの恋人ってのに会ってから、「嫉妬してんの?」なんて敬吾に言われて頭にきてしまった。

 

嫉妬?してるさ。悪いかよ!

 

それに明日には敬吾の家族に会うんだって思うと歯止めが効かなくなって、普段押え込んでる分、敬吾が嫌がって泣いてるのにほぼ無理矢理犯り倒してしまった。

 

こう言ったら敬吾は怒るだろうけど、それでもしっかり感じっちゃって声、絶対外まで聞こえてるし、アソコもすげえ締まるし。

 

どうせこうなったら後で機嫌を取ってやらないと怒るんだから、と思って生で何度もブチ込んだ。最後は敬吾の方が俺が1回イク間に2回くらいイッちゃって、感じまくってる。

 

こういうの意外と好きな癖に。もうちょっと素直になって欲しい。うーん、可愛い!つーかホント良い顔してイクよなー。

 

色っぽい顔に煽られて俺がイッた後、まだ敬吾の中に入ったままで身体を震わせてると、敬吾も俺にしがみ付いて何度目かの絶頂を迎えた。そして身体を反り返らせた途端、敬吾の目がクルっと裏返った。

 

(あちゃっ、また気失っちゃった。ん?)

 

その時、背後でパタンって小さな音がした。

ライン ドット

*Copyright by Green Day Boulevard Of Broken Dreams

この曲、一時嫌っていう程聞かされましたけど、改めて聞くとやっぱり良いです♪どうでも良いけど、彼らベイエリアの出身なんです。意外と(?)多いんですよね、地元出身のバンド。

 

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