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「上は脱いだ方が…濡れるよ。」
「いい。」
ビーチに行くことだけは承知したけど、俺はしっかり水着を着込んで、その上にパーカーまで羽織った。
例のビーチに行くには、まず道路から普通のビーチに降りる。それから岩場の浅瀬をグルッと回ると、背後に急な崖をしょった、周りからは見えにくいビーチが現れた。
成る程…確かにこれなら道から見えたりはしないよな。
よっぽど怪しい連中が溜まってるかと思ったけど、祥平の言うとおり午前中はそれ程人がいない。ちらほらカップルの姿が見えるけど、皆ちゃんと水着を着てた。
「夕方になると潮が高くなって、このビーチ自体海に沈むから、それまでにさっきの岩場を回って帰らないと、帰れなくなるって。」
「いや、そんなに長くいないから。」
意外と健全な雰囲気に安心して、俺はパーカーを脱ぎ捨てると早速海に飛び込んだ。
(ああー、気持ち良いー!)
フワッと身体が浮いて、浅瀬になってるせいか、水も温かく、波も緩やか。顔に当たる日差しが心地良い。プカプカ浮いてると、波打ち際の方まで自然に運ばれる。じっとしてれば足が着く距離まで来ても、波に乗ったまま浮いていられる。
貝殻になって流されてる気分…。
「わああっ!」
「そんなびっくりしなくても…」
ふわふわしてたら、祥平に羽交い締めにされた。
「気持ち良さそうな顔して…もっと気持ちいいことしてあげようか?」
「やだ!ビーチに来たんだから泳ぐ!」
「そう言わずに…」
「やっ、やだって、おい!」
水着、返して!
人が少ないとは言うものの、スッポンポンで歩き回る度胸は無い。大体、普段ちっとも焼かないから、生っ白くてカッコ悪いし。せめて祥平みたいに腹筋割れてるとかならいいけど…。
(ま、誰もいないからいいや。)
沖の方まで泳いでしまえば、どうせ誰にも見えやしない。ゴーグルを付けて、少し潜ってみた。それ程透明感は無いけど、それでも下から見上げると、海面に日差しがキラキラ散ってるのが見える。
裸で泳いでると、まるでお魚になった気分。
「プハーッ!」
「敬吾、見えないとこ行くな!心配するじゃんか!」
「じゃあ水着返せよ。」
「チェッ、しょうがないな。」
へへっ、やったあ。隠すとこ隠すとやっぱり安心!
「お前、泳ぎ上手いな。」
「そんなこと無い、普通だよ。泳ぐの遅いし。」
「けど、結構潜ってだぜ。」
「そう?」
またパチャパチャ泳いでから、しばらく祥平とふざけ回ってると、
「ちょっと見てみろ、あいつら。」
「?」
身体にぴったりしたサーファーパンツを穿いた2人組が現れた。
(祥平はああいうのがいいのかな?)
双子…みたいだ。沖の方から見ても、日差しを浴びてキラキラ輝く長めの金髪。それなのに濃い褐色の肌をしてる。
「あれに間違いないな。」
「なにが?」
「フフッ、ちょっと話し掛けてみようぜ。」
俺に絡み付いてた手足を外すと、祥平が砂浜の方に泳いで行ってしまった。
なんだよ一体…。
「ハーイ!」
って、祥平がその2人に話し掛けたかと思うと、そのうち俺の方を向いて手招きした。無視してるのも大人げ無いと思って、渋々そっちに行く。
けど、こういうタイプ俺は苦手。
アメリカに住んでてどうかと思うけど、金髪、薄めのカラーの目は超苦手。特にこの2人みたいなオッドアイって申し訳ないけど、気色悪い。客観的に見て、美形って言うんだろうか?
近くで見ると、2人揃って片目がグリーンで、片目は金色。そのサーファーの兄ちゃん達は、話してみればメローで典型的なサーファーデュードで、サンディエゴ・ステートの学生ってことだった。
アイリッシュにブラック、他にも色々混じってるって気軽に話す。
というか、自分たちの容姿を誉められるのが嬉しいらしくて、バイトでモデルやってるとか、一日に一回はここで肌を焼くとか、水着の後が付くと不味いから、裸じゃないと駄目なんて、ペラペラ喋る。
一通り、自分たちのルックスをいかに完璧に保つために努力してるかっていう話を聞かされた後、愛想よく「バーイ!」って俺達に手を振ると、少し先の崖の下にマットを引いて、2人とも裸になった。
「いやー、噂通り、物凄い美形。」
「そおお?」
「ええー!なにその反応?見たろ、あれ?ちょっと有り得ないじゃん、あのコンビネーション。」
まあ、珍しい髪の色と肌の色の組み合わせではある。金髪は染めて色が褪せた髪と違って、地毛らしい。肌も無理して焼いた赤黒さが無くて、自然なトーンの褐色。
グリーン・アイなんてもっと珍しいし、片目だけってのも。サーファーらしく身体も引き締まって…
あやや!?
「始まった!」
祥平が可笑しそうに笑う。気がつくと他にも人が集まって来てた。本人たちもどうやら見られるのは嫌じゃないらしい。
多分日焼け止め…いや日焼け用?オイルを2人して身体中に塗りたくってるんだけど、水着も何も着てないし、そういうとこまで塗らなくても…そんなカッコで塗らなくても…っていう個所までベトベトに両手で塗りたくってる。
そのうち2人で絡み合ったままキスを始めた。
双子…だよね?
「同じ顔して…ありゃ究極のナルシストだな。」
「やっぱりそういう関係かな?」
「見りゃわかんじゃん。ああなると全然興奮しねーなー。むしろホラーだぜ。」
いや、そこまで言わなくても。
「俺やっぱ、こっちの大学に来なくて正解。」
「そんな…彼らは別に関係無いじゃん。」
「けど、外見が命、って奴が多いぜこの辺。やっぱLAも近いしな。」
「そうなんだ。」
特にステート・スクールってプレイボーイバニーみたいなブロンドとか、目の前で絡み合ってる兄ちゃん達みたいなのが多いとか。
祥平だって充分奇麗だけど…。
「俺は、ああいう頭空っぽな奴は駄目だな。」
「ふーん…。」
「なに?どうしたんだよ?」
「だって…俺のこと、いっつも馬鹿って言うじゃん。」
祥平が小さく舌打ちすると、ふくれっ面の俺を横目で見て、軽く溜め息を吐いた。
「あのさ、言っとくけど、俺は敬吾が馬鹿なんて全然思ってないからな。」
「嘘!俺のことトロくって、苛々するって…。」
「それは時々…ほら、お前があんまりボケたこと言うから。けど、俺は敬吾が俺より劣ってるとか、馬鹿とか思ったことは一度もないから。」
ちょっと嬉しい。
「そんな奴に愛してる、なんて言えるかよ。」
とっても嬉しい!
双子たちに刺激されたせいか、周りでも裸で日光浴する人が増えた。いつもそうだけど、周りに流され易い俺は、皆がそうしてるならいいかって思って、裸でタオルの上に寝転んだ。
そしたらなんという気持ち良さ!
泳いだ後のグッタリ疲れた身体が、熱い砂と日差しに暖まる。股間がスースーするけど、そこにも温かい日差しが降りかかる。
「日焼け止め塗ってあげる。」
「いいよ。自分でやる。」
「いいじゃん。誰も見てないって。」
「変なとこ触んなよ!」
「分かったってば。」
これって天国…。
祥平が日焼け止めのクリームを俺の全身に、マッサージするみたいに塗ってくれる。
「くううーん。」
犬みたいに鼻を鳴らして甘えると、
「俺にも塗ってよ。」ってクリームを渡された。
「はーい。」
祥平も素っ裸。こういう眩しい日差しの下で、シゲシゲ見たのは初めてで、太陽の光を跳ね返す白くてツルツルした肌に思わず見とれる。
「早く、塗れ。俺は焼けると赤剥けになるんだよ。」
「はいはい、ただいま。」
タオルの上で2人で手を繋いだまま寝転んだ。ポカポカ、ポカポカ、暑過ぎず、寒からず…。寄せては返す静かな波の音に紛れて、周りの音も聞こえない。そうやって寝っ転んだまま、祥平が話しかけた。
「なあ、敬吾。」
「うん?」
「もし簡単に目の色変えられるとしたら、何色がいい?俺はやっぱりああいう金色の瞳がいいな。もうちょっと色素薄くして、エイリアンみたいじゃん。」
「へ?何言ってんの?」
「DNAをチョコチョコっと弄れば瞳の色なんて簡単に変わる様になるらしいぜ。もうかなり研究が進んでるって聞いた事ある。」
「げえっ、何それ!」
祥平の説明によれば、瞳の色を変えるDNAっていうのは割と簡単に特定できて、それ専用の目薬を垂らせば、瞳の色を毎日でも変えることが出来るようになるらしい。カラーコンタクトの代わりになる製品化のためのテストを、もう行ってる会社があるとか。
(気色悪い…。)
「じゃあ、髪の色とか肌の色とかも同じ?違う人種になったり出来るの?」
「さあ…でも髪とか肌ってのは後天的な要素もあるだろ?DNAだけじゃなくて。猫の毛の色なんかも上手くクローニングするの難しいんだよ。母体のコンディションによって変わるから。その点、瞳の色なんてもっと単純なんじゃん?」
(ああ…最早SFの世界!)
俺は肘を起こすと祥平の顔を見た。
「あのさ、俺は今のままの祥平が好きだから。髪の毛から爪の先までそのままの祥平が好き!奇麗な目も大好き!頼むから絶対、絶対どっこも変えたりしないで。」
「クスッ、そんなムキにならなくても…いつでも簡単に元に戻せるんだってば。」
「嫌だ!失敗して元に戻らなくなったら困る。絶対に嫌!」
「フフッ、分かったよ。でも面白そうだと思ったんだけどな。」
「駄目。祥平はそのままで完璧!祥平は…俺のどっか嫌なとことか、変えて欲しいとこあるの?」
ちょっとドキドキしながら聞いた。青い目が良いとか言われたら、俺は一体どうすれば…。
「全然。というか俺あんまり外見には拘らないから。」
「あのな…」
「冗談だってば。俺も敬吾のことは、ちょこっと皮つきのアレも含めて大好きだから。」
「ば、馬鹿!余計なこと言うな!」
(ひ、人が気にしてることを…ヒェーン…日本人はこれで普通なんだよ!)
祥平が俺の手を握ったままクスクス笑いながら、こっちを向くと俺にキスした。
「俺もそのままの敬吾が好き。愛してるよ。」
「外見のことは言わないことにしよう…その、つまり…」
「はいはい。でも可愛いから好きだよ、全部。」
キスが段々深くなってクチュって音が微かに響く。背中に回された祥平の手が俺をギュッと引き寄せた。
「俺、もうやばい…」
「ホテル戻って…する?」
「うん。」
(戻ってからちゃんとシャワーを浴びたのに…気のせいだろうか?)
祥平から少し潮の香りがする。抱き合った後、その香りに包まれて眠った。こんなに近いんならまた来たい。今度はお休み取ってついて来ようかな?祥平がいない間、泳いで…昼寝して…。
――今年も良いバースデーだった…祥平?
My sweet child…I love you like crazy…
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このDNAカラーコンタクト目薬について聞いたの、もうかなり前の話なんですけど、その後こういう商品が出回ってるっていう話は聞かないので、どうなんでしょう?(汗)
でも理屈では十分可能みたいです。軍からの研究費で、腕とか足の皮膚や組織を再生するためのリサーチも行われてるらしいし、ほんとSFの世界は目前ですね;;