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それにしても仕事が詰まらない。入社して2ヶ月になるのに、いい加減に単純なプログラムばっかり頼まれるのに飽き飽きしてた。マークとランチに行った時に愚痴ると、
「あれ、ケーゴはその方が楽でいいと思ってるんじゃないの?」
「えー、違うよ。いつになったらもう少しマシなことやらせて貰えるかと思って待ってるんだよ。」
マークが不思議そうな顔をした。
「待ってるって?違う仕事したいなら、自分から言わなきゃ。ケーゴはプログラムの修正するの好きって思われてるよ。」
「だって、俺はSEとして雇われてるし、今は仕事始めたばっかだから、言われたことだけやってるけど…」
「それじゃ駄目だよ。」
マークに言わせると、職場では自分を積極的にアピールしないと、評価にも繋がらないし、ましてや俺みたいに高い給料貰ってるのに単純な仕事で満足してると思われると、3ヶ月くらいで「役立たず」っていうレッテルを貼られて、下手すると解雇ってことも有り得るとか。
「それって酷くない?」
「そういうもんでしょ。ケーゴもボケっとしてないで、ちゃんと自分の意見言わなきゃ。」
「だって、誰も俺の意見なんて聞いてくれないし…」
「ちょっと、ケーゴ!」
かなり呆れられたみたいで、急にマークが説教口調になった。なんか祥平といるみたい…。
「言われないから仕事しないなんて言ってちゃ駄目だよ。」
「う、うん。」
日系企業で安い給料だった分、俺はかなり楽してたみたいだ。言われたことだけやってればオフィスポリティックス、社内の人間関係、力関係、その中の自分の位置なんて心配する必要なかった。今思えば、割と皆和気あいあいとやってたし。
ここは小さい会社だけど、それだけに人間関係はシビアみたいだし、資金も本社のバックアップがあるわけじゃないから、解雇っていうのも常に有り得る。積極的に人の前に出て、常に自分を売り込まないと駄目らしい。
苦手…。
「取りあえず、誰に話せばいいと思う?」
「さあ?ケーゴのボスは誰って事になってるの?」
「一応、君のボスだけど…」
「そうなの?一度も話してるの見た事ないね。」
「呼ばれた事ないし…」
「だからぁ…」
「分かった、まず自分からアプローチします!」
と言ってはみたものの、「もっとマシな仕事下さい。」って言うだけのために、忙しそうなディべロプメントのVPのオフィスに行くのは躊躇われて、その日はどうやってアプローチしたらいいか考えるだけに留めた。
それからは毎日、マークが俺の顔を見る度に、目をクルっと上に向けては、呆れたっていう表情を作り、ペンを彼の背後にあるVPのオフィスに向かってツンツン突き出すと、早く話をしろってけしかけた。
(マークが心配してくれるのは嬉しいけど、あの人怖いんだよな。)
金髪、青い目の白人で背が高い。俺が簡単な挨拶しても聞き取れないみたいで、いかにもイライラした様子のしかめっ面で聞き返す。テキサス出身ってことで、少し彼の英語にも訛りがあって、俺も聞きづらい。
「どうしたらいいと思う?」
祥平に聞いてみたら案の定、
「こんな詰まんない仕事しかさせないなら、辞めるって言えば?大体、最初に下らない仕事押し付けられた時点で、これは俺の仕事じゃないって言わないのが悪いだろ?はあ?怖くて話しづらいって、お前はガキか!」
(ま、そう来るだろうとは思った。)
なるべく暇そうで、機嫌の良さそうな時にVPに話をすべく、マークに聞いてみた。
「今日の午後はミーティングも入ってないし、ランチの後とかならいいんじゃないかな。仕事内容についてちょっと質問があるって言ってみれば?あくまでポジティブにね。不満を言ってるって取られちゃ駄目だよ。」
「うん、色々ありがとう。」
マークは一昨年大学出たばっかりで、この会社が初めての職場なのに俺よりよっぽどしっかりしてる。祥平のよりか、ずっとまともなアドバイスだし。
その午後、ランチを食べてから2時頃までグズグズして、ようやく気力を奮い起こすとVPのオフィスをノックした。マークがウィンクしてくれる。
「どうぞ。」
「ハーイ!少し時間ありますか?」
不満を言いに来たって思われないように、明るくにっこり笑って話し掛けたけど、返ってきたのは、
「少しなら。」
っていう短い返事と、あんまり話を聞きたそうじゃないのが見得見得の、取ってつけたような一瞬で消えたスマイル。色の殆ど無い薄青い目が…
やっぱり怖い!
緊張の余り、普段から訛ってる英語がさらにもたつくのが自分でも分かって、さらに緊張し、話が支離滅裂になった。
それでも、何の反応もない上司の顔に向かって、出来ればもう少しシステムの開発に関わる仕事がしたいこと、プログラムの修正なんかは忙しい時は喜んで手伝うけど、そういう仕事は自分が本来やりたい仕事じゃないってことを何とか伝えた。
でも、俺が話終えた後もしばらくジッと顔を見たまま反応がない。ひょっとして俺の英語が分かんなかったかと思って、言い直そうと口を開きかけたら、
「今はそういう仕事は無い。」
という意味の事を言われた。
それ以上取り付くしまもなくて、どうしていいか分からずに突っ立ってると、冷たい目で睨まれた。しょうがないから「失礼します。」って言ってオフィスを出たけど…
ムカついたー!
何あの態度!そう言えば面接の時もあいつだけ何も言わなくて感じ悪かったかも。他の人は皆、愛想だけはいいのに。
自分の席に戻ってプリプリしてると、その夕方、
「ハイ、ケーゴ、元気にしてる?」
「あ、は、ハーイ…」
突然社長さんが顔を出した。時々擦れ違って挨拶する以外は、入社してからは一度も彼と話した事はない。
「ちょっといい?」
「なんの話だろう?」と思って彼のオフィスに行くと、俺の仕事の話だった。どうやらあの無愛想なVPが社長に俺の話をしたらしい。
「ま、そういう訳なんだよ。彼は少し言葉が足りない所があるから、僕の方から説明しておこうと思ってね。もうしばらく我慢してもらえるかな?」
「は、はあ。」
わざわざ社長自ら俺なんかにそういう話をしなきゃならないなんて…。
彼の話をかいつまむと、要するにうちの会社の最大の取り引き相手が、最近他の会社のソフトを導入し始めて、うちとの取り引きが減ってきてるらしい。
社長は“temporary set back”(*)って軽く言ったけど、本当はかなり危機的状況にあるんじゃないかって思う。新製品の開発は当分見合わせってことになってて、俺はどうやら最悪のタイミングで雇われたみたいだ。
俺なんかに高い給料払ってて良いのかって思うけど、既製のソフトの修正をサッサとこなすプログラミングの能力を買われてるらしい。喜んでいいのか何なのか…。まあおかげで俺の首は繋がってる訳だけど。
やっぱり小さい会社って大変。俺、ひょっとしてまた転職しなきゃいけなくなるのかも。
一応自分の存在価値をアピールするために、その日は珍しく残業してみた。だからって仕事が無くなれば容赦無く首になるんだろうけど…。
そう思いつつ暗い気分で家に帰ると、リビングのテーブルでラップトップを見てた祥平が、ニヤニヤしながら振り向いた。
「おかえりー。」
「ただいま…な、なに?」
「これ、やらしいなー。敬吾はこういうの好きなんだ?」
「は?」
祥平がラップトップを指す。そこに映し出されてるのは…いいっ?ポ、ポルノ?
「こ、こんなの俺知らない、祥平のだろ!」
若いアジア系の男が口一杯に、黒人と思しき男の異様なまでにでかいモノを頬張っている。
「ジュンから、敬吾に見せてくれって。ジュンがお前に何送って来たかと思ってさ、ファイル開けてみたら思った通り…。なんでこんなの送って来たんだよ?ひょっとして敬吾はこういうのに出たいわけ?」
「違うよ!俺は興味無いってちゃんと言ったよ!」
「あいつもいい加減しつこいな…」
その時、「あああーん!」っていうようなすごい声がしたと思ったら、モロにその結合部分の大写しで、
「ひゃー、すげー!よくこの小せえ尻にこんなん入るよな。うわっ、根元までぶっつり。」
思わず二人で、その異様な太さのモノがお尻に飲み込まれていくのに見入ってしまった。
「敬吾もこういうデカイの試したい?」
「まさか…。見ただけで痛そう。」
確かジュン君は“ソフト”な映画とか言ってなかったっけ?このそのものズバリの映像のどこら辺がソフトだ?しかも思いっきり生で突っ込んでるし…。
「せっかくだから記念に俺等がやってるとこも撮って貰う?」
「遠慮しとく…。」
ジュン君に電話してきっちり断っとかなきゃ。にしても人間の身体って、驚異…。
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temporary set back=一時的後退。という風に訳すのでしょうか?(汗)会社の景気が悪くなると、こういう希望的観測に満ちた説明をされますけど、こういう説明が始まった時点で、問題がテンポラリーで済むことってあんまりない気がする^-^;