パレード

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ライン ドット

「わざわざ言う必要無いんじゃない。」

「え?だって…」

「ストレートがさ、俺は女が大好きです、なんて自己紹介すると思う?」

「それは…」

「隠す必要は無いけど、言って回る必要も無いだろ。普通にしてろよ。会社は仕事しに行くとこだろ。プライベートをベラベラしゃべるとこじゃない。」

「まあ…」

 

意外。まあそう言われればその通りなんだけど…。

 

「祥平は学校でも隠してないだろ?」

「特に隠したりしないけど、自分から言い回ったりもしないぜ。知ってる奴は知ってるけど、関心無い奴は知らないだろ。それでいいじゃん。敬吾も誰かと仲良くなって、色々話せるようになったら話せば?」

 

なるほど…。そうだよね。今までは隠し事してたから友達できなかったけど、俺がゲイって分かっても、仲良くしようって言ってくれる人とは友達になれるかもしれない。

 

少しずつ前向きに…

 

バンドの行進が過ぎると、いよいよパレードが終盤を迎えた。沿道の群集も移動し始める。同じ方向にしばらく歩くと、お肉の焼けるような美味しそうな匂いがしてきた。そう言えばフードコートで会おうってさっきの子が言ってたっけ。

 

途中の芝生のあるエリアでは幾つか輪になったグループが出来てて、歓声が上がっていた。身体に掛け合ってるビールが空中に飛び散ったりしてるから、昼間っから飲んでる人達もいるらしい。みんなやたらと楽しそうだ。

 

そのうち人がゴチャゴチャ混み合ってきて、前に進まなくなったと思ったら…

 

お尻…触られた?

 

それをきっかけに色んな人にやたらと身体を触られた。明るく声を掛けられるのはいいんだけど、ついでにタッチされるのはどういうものか…。

 

かなり酔ってます?

 

「敬吾、帰るぞ。」

 

さっきから痛いくらい俺の手を掴んでた祥平が、俺を引っ張って人波と逆方向に歩き出した。

 

「でも、さっきの子と待ち合わせしてるんじゃ…」

「こんな人混みで会えるか。これじゃ酔っ払いに触られるために立ってるみたいなもんじゃんか。」

 

そうだよな。俺に触ってくるくらいだから、祥平はきっともっと…

 

途中色んな人に声を掛けられながら、ようやく人混みを抜けて、正直ホッとした。

 

「やっぱりあれだけ人が集まると色んな人がいるよねー。」

「ああ…ここにくれば間単にやれると思ってる奴もいるしな。」

「そっか。」

 

子供連れで来てる人達も多いし、今や有名なパレードだけど、人が大勢集まれば色んな人が来るわけだ。若い男の子達だけでビールとか飲んでたし、あれはあの後きっとみんなで「盛り上がる」っていうか「やりまくる」んだな。

 

サンフランシスコってやっぱりゲイが多いんだ、って感心してたら、あれは余所からバス連ねてやって来た連中って祥平に言われた。

 

・・・・・・・・・・

 

その日の夕方、二人でサンセット・ビーチに散歩に行った。

 

夏でも風が強くて寒いんで、熱いお茶と毛布は俺の必需品だ。けど、その日は珍しく波の静かな温かい日だった。普段はサーフィンに絶好のスポットだけど、その日はサーファーも殆ど居ない。

 

キャンディとシンディを散歩させた後、毛布を砂浜に敷いて祥平と並んで夕日を見た。

 

なにも考えずにアキを追いかけて来たアメリカ。たまたまアキの会社があったベイエリア。

 

自分の意志で選んだわけじゃない、けど今では間違いなく俺の居場所。寄り添って歩く相手が側にいる。

 

未だに祥平のことはよく分からない。変に強情だったり神経質だったりパラノイアで怒りっぽくて…かと思うと繊細で優しくて素直で可愛くて…。

 

それでもまた一緒に住みだしてからはお互いに少し歩みよったと思う。

 

まず俺は家では肉は調理しない事にした。それで別に困るってわけでもない。うどんを作ったら祥平の分だけ取り分けて、それから自分の分だけ最後に花鰹を放り込む。拘らなければどうってことはない。

 

アヤちゃんをお風呂に入れるのは毎週じゃなくて月に一度にした。その分毎日必ずブラッシングしてあげる。

 

掃除は普段は気になる方がする。そういう時はやりたい方は文句を言わずにする。ただし、日曜日の午前中は二人で分担して家中の掃除をする。

 

洗濯は早く帰った方が毎日溜めずに洗濯機に放り込む。洗濯機で洗えないものは自分で洗う。乾燥機に入れたら駄目なものは別のバスケットに分けて入れておく。

 

細かいことだし、必ずそうしないと駄目ってもんでもないけど、二人で話し合って決めたり、自然とそうなったりしたことだ。

 

詰まんないことで喧嘩することもしょっちゅうある。祥平は時々とんでもなく意地悪でトコトン俺をやっつける。殴られたりするわけじゃないけど、これじゃ言葉の暴力って思うくらいポンポン言い負かされる。

 

そういう時、以前なら黙ってたけど、今は言い返すようにしてる。俺が顔真っ赤にして言い返すと、しまいには悪かったって謝ってくれる。

 

こういうの雨降って地固まるっていうのかな?

 

祥平に寄り添って海の向こうに沈む夕日を見ながら思う。

 

もっともっとお互いを分かり合って、いつか本当の家族になれたらいい。「普通」でなくていい、俺達の家族に。

ライン ドット

後書き

 

そんなわけで第一部終了です。メールやコメントで応援して下さった皆様、本当にありがとうございましたっ!すっごく嬉しかったです^-^

 

出来ましたら、このまま続けて第二部も宜しくお願い致します。

 

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