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「…敬吾。馬鹿って言われたくなかったら、そういう馬鹿なこと言うなよな。あのセクハラ親父のどこが“いい人”なんだ?」
「セクハラって…あれは俺の方も悪かったし…」
「お前なんか勘違いしてないか?」
「なにが?」
呆れたっていう風に肩を竦められる。
「お前さ、あいつとラバー付けてやったって言ったよな。」
「うん。それだけはしないとって、俺…」
「で、それはお前が持ってたわけ?」
「違うよ!そんなつもりじゃ無かったってば!そんなん持ってるわけ…」
「いいから喚くな。それじゃ、“悪くなかった”そうだけど、いきなり突っ込まれて痛く無かったわけ?」
「え?そんなことしないよ。ちゃんとジェルも使ってくれたし、その…」
「へー、それも敬吾が持ってたわけじゃないよな。」
「当たり前じゃん!」
「で、どうしてそんなものが都合よくあったわけ?それとも二人でドラッグストアでも行った?」
「違うよ。あれはただ成り行きで、買い物になんて…」
「だよな。じゃあ整理してみると…」
…なぜか都合よく恭介さんのオフィスにコンドームとジェルがあった…。
「だから、そのうち敬吾をオフィスで食うつもりで準備してたんじゃん。気色悪る!そのくらい気づけよ。」
「そんな…余裕無いだろ、普通。」
「まあコンドームの一つや二つ持ってるのはともかく、俺ならジェルとか取り出してきた時点で、絶対笑っちゃうけど。そこでズズーっと引くよな。引いたついでに帰っちゃうし。」
「…。」
「まったく、お前なんか落とすの一発だよな。あいつ相当自信あったんじゃん。寝てしまえばこっちのもん、って。ま、あいつにとっちゃ、俺が相手だったってのが計算外だったな!」
ハハハって…笑えない。そう言えば「寝ちゃった後で振られたのが傷ついた」みたいなことを言ってたっけ…。
「大体さ、あいつだって敬吾が自分から辞めてくれれば助かるんじゃない?セクハラとかで訴えられても文句言えないじゃん。それを目までウルウルさせて、 “恭介さんっていい人”って…。俺はお前がほんっとに馬鹿だから馬鹿って言うんだよ、分かる?」
ううっ、反論できないっ。
「今まで散々安い給料でこき使われて、あいつに夜遅くまで付き合わされて、挙げ句の果てに美味しく食べられて…お前ってホントにeasy。」
…傷ついた…。グサッって祥平の言葉が突き刺さる。
言われてみれば確かにあの時全てがとってもスムーズに運ばれて、それで俺も流されたっていうところもある。もしゴムが無いとか、痛くて上手く入らないっていうことになってたら、そこでハッと正気に返って、やっぱり止めますって言ってたと思うし。
なんだかなー。「そのつもり」で全部準備して俺が「落ちる」のを待ってたのかと思うと…
確かに気持ち悪り…。
「ま、味見だけさせられて、あとはお預けってもの可哀想だよな。お前って、寝てみりゃ見た目より中身の方がずっといいし。ま、これ以上見込み無いって分かった時点で辞めてくれるんだから、あいつにとっちゃ都合のいい話だよ。」
祥平はここぞとばかり恭介さんのことをボロクソに貶し、俺も確かに恭介さんを見る目が変わったけど…。
カーラは時々デスクでハンド・ローションを塗ってる。オフィスは乾燥するらしく、女性はよくデスクでローションを使う。次の日、俺はさりげなくカーラのデスクで彼女に話し掛けながら、そのローションを観察した。
うーん、やっぱりこれじゃない。
ひょっとしてカーラのローション使ったのかな、と思ったけど全然違う。第一カーラのは香料がプンプンして匂いがきつい。それにジェルっていうより、クリーム状だし。そもそもカーラのデスクにあるローションが恭介さんのオフィスに「たまたま」あるっていうのも変。
ってことは、やっぱり…。
あーあ。なんか幻滅。そういう寒いことしないで欲しいなー。だいたい俺がそんな準備万端整えて「落とす」ようなシロモノですか?
とはいえ、別に無理矢理レイプされたわけじゃないし、文句を言う筋合いじゃない。ただ今まですごく素敵な人だと思ってた恭介さんのイメージが崩れちゃったっていうだけだ。おかげで気持ちの隅にあった、恭介さんに対する「好き」みたいな甘い感傷が奇麗に消えてしまった。
前から辞めるってことは皆に言ってあったし、引継ぎもどんどん済ませてたんで、次の仕事を始める前に少し溜まってた休みを取ることにした。
特に何をするっていうわけでもなく、2、3日家でゴロゴロする。
祥平が居ない間に好奇心に負けて、クローゼットの中を掻き回してみた。
ウォークインクローゼットの中はキチンと整理されている。ただ、隅の方に箱が積み上げられていて、その中身が前から気になっていた。人の物勝手に見ちゃいけないと思って我慢してたんだけど、つい暇だし…。
でも見るんじゃなかった…
箱一杯にいわゆる大人の玩具が…。しかも、捨てたはずの俺に使用済みのものも、他のやつとは別にして、きっちりジップロックに入れて取ってある。まさかまた使おうとか思ってないよな…。
しかし用途不明のものが多い。
この間祥平が俺のアソコに入れようとした細長いステンレスの棒は、サウンズっていうらしい。本当は医療器具なんだけど、エッチ目的にも使うとか。
そういう趣味のある研修生とした時に使い方を教えられて、直ぐ上手に使えるようになったからすごく誉められたって言ってた。
「俺って器用だし、頭いいから飲み込みが早いんだよ。」って。
器用とか頭がいいとかいうより、そういうこと素で自慢するあいつの神経に問題あると思ったけど、それは言わないでおいた。
俺に使おうとした奴はバイブにもなってて、ヨーロッパ製で100ドル近くするものらしい。「折角貰ったから試してみたかったのに。」ってブツブツ言ってた。この辺の店じゃ売ってないみたいだ。
当たり前だって。普通はあんなの使わないの。
でも好きな人はアソコにピアスみたいに挿入してるらしい…。
最近は俺も何を聞いても「ふーん」と「へー」で終わって、一々驚きもしないけど、この話は聞いただけで股間が痛っ。
他の箱には…下着?っていうかヒモ?うーん、多分こういうのも全部貰ったんだよなー。しかし、これは…。祥平がこういうの付けてるとこ想像すると、かなり見てみたいかも。
最後の箱にはDVDがゴチャゴチャに入っていた。手書きのカバーとか、カバーが無くて直接ディスクにタイトルが入ってるのは、危なくて見ない方が良さそう。
だけど中には普通の映画も結構混ざってる。祥平の好きな映画とかCDはラックに入れて出してあるから、これは人から貰ったのを適当に箱に放り込だんだろう。
「あれ?」
これ見たかったんだよねー。映画館で上映されてる時は恥ずかしくて見に行けず、DVDも借りるのが恥ずかしくて見られず、かと言ってオンラインで買ってまで見ようとは思わなかったけど、祥平が持ってたなんて。
この映画結構流行ってたけど、祥平好きじゃないのかな?こんなところに自家製発禁ポルノのDVDとおぼしきものと一緒に突っ込んで。ま、ちょうど良かった。暇だから見よう。
・・・・・・・・・・
風景は奇麗。音楽も素敵。主役の二人もいい男だし、特に金髪の方は演技も上手い。けど俺は頭を傾げてしまった。
なにこの落ち?
悲恋?まあね。良く出来たストーリー?確かに。けど、納得いかない!
「ねえ、祥平。ブロークバックのDVDあったけど、見た?」
祥平が帰ってから聞いてみる。
「はあ?」
「あの映画さ、どう思う?俺、なんか嫌なんだよねー。なんであの映画あんなに受けたのかな?」
「敬吾。ちょっとどいて、邪魔。」
キッチンでパスタを作ってる時の祥平は、俺がウロチョロしてると嫌がる。茹で上がったパスタを野菜やガーリックと一緒に炒めるタイミングが大事で、手早くやらないといけないらしい。邪魔にならない位置に立って話してたのに、シッシって追い払われてしまった。
めげずに話し掛けようとしたのに、煩いから後でって言われてむくれてしまう。そもそも祥平って俺の意見なんて何につけても聞こうとしないし。
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後書き
泌尿器科の医者なら、必ず一度はペンか鉛筆が抜けなくなった患者を診たことがあるとか。「え、ペン?どこに?」なんて言ってるあなた、本当に腐女子ですか?(^_^;)ここら辺、また日記もどきに書いてみましたので、宜しかったら読んでみてね。(「医者のジレンマ」2007.10.6、「魔法の杖」2007.10.8)それから今回は続き物の翻訳小説を一度お休みして、このプレイの体験談というものを訳してみました。なんというか淡々として、なおかつ非常に勉強になる(?)というか、この手の話にしてはグロくないところに心打たれました。
(それとまた古い映画の話題で申し訳ありませんっ!)