お誕生日II

2

ライン ドット

「ああ。うん。いや、今?駄目。そう。うん、そいつといる。うん。電話サンキュー。ああ、そのうち。」

 

その短い受け答えの間に、今度は祥平の携帯が鳴り出した。祥平が着信を見て電源を切る。

 

「リビングの電話もアンサリング・マシーンに切り替えとこ。」

「いいよ、別に…。」

 

今度は玄関のベルが鳴った。インターコムで確認するとでっかい薔薇の花束が見える。ドアを開けるとデリバリーのお兄ちゃんに受け取りのサインを頼まれた。その花束も無言で祥平に押しやる。

 

その後も、祥平が家に帰るのを見計らったみたいに、電話がひっきりなしに鳴り続けた。留守電に切り替えてるけど、ピーっていう録音開始の音がして落着かない。おまけに次から次へと色んなものが届く。

 

これはまるで…売れっ子ホステスの誕生日?

 

「敬吾、いいからお前、座ってろ。一々ドア開けなくていい!」

「だって、せっかくのプレゼントだし…」

「どうでもいいんだよ、そんなん。放っとけ。飯が冷める!」

 

前言撤回。ちっとも可愛くない。

 

「こんなことなら祥平と寝たい奴みーんなご招待して、乱交パーティでも開いてあげればよかったねー。気が利かなくて悪りーな。」

 

俺がそう言うと、ガチャンと音を立てて祥平がフォークを置いた。

 

「喧嘩したいわけ?俺はそんなつもりないぜ。」

「そんなつもりじゃ…」

「じゃあ、そんな嫌味な言い方すんな。」

 

決め付けられてムッとして俯いた。こういう言い方されると、謝る気しなくなる。そしたら祥平が少し口調を和らげた。

 

「敬吾…。俺は敬吾と一緒に、敬吾が作ってくれたご飯食べたいんだよ。俺にどうして欲しい?電話も携帯も出ないし、ドアベルも無視していいって言ってるだろ?俺の誕生日祝ってくれるんだろ?頼むからどうでもいいこと気にしないでくれよ。」

 

そう素直に言われると…

 

「う、うん。ごめん。…けど、もう嫌味言わないからやっぱドアには出るよ。何度も鳴らされると余計うるさいし…。」

 

祥平が溜め息を吐く。

 

「じゃあ、俺が出る。俺のせいだし。」

「…けど…」

「いいって。それと、これからは貰ったもん全部突っ返す。それでいいだろ?」

 

そこまでして欲しいわけじゃ…。

 

プレゼント攻撃は7時台がピークで、それ以後はさすがに来なくなった。しかし、花束が6つ、大小様々の箱が30個くらい?椅子に座ってる暇が無かったはずだ。

 

「これ可哀想だから、やっぱ花瓶に入れる。」

「ほっときゃいいのに…。」

 

そう言いながらも手伝ってくれた。

 

ゴージャスな薔薇の花束はベースごと送られてきた。それをリビングのテーブルの上にドンと飾ると、部屋がパーっと明るくなる。あとは色とりどりの花束を部屋中に飾った。その間、花の香りがリビングに満ち溢れる。

 

「…ったく、花なんか送ってきやがって。」

「でもこれだけあると壮観だよ。」

「ふーん、そうだな…。よし!」

「なに?」

「いや、いいこと思い付いた。」

「?」

 

なにを思いついたのか急に機嫌良くなるし。ま、いっか。

 

ようやく静かになったところで、ケーキを一緒に食べた。ディナーはゆっくり食べられなくて冷めちゃったけど、ケーキは奇麗で美味しいって散々誉めてくれた。

 

食べる前になぜか俺がケーキを持たされて写真まで撮られる。笑ってって言われても…照れ…。

 

キッチンで後片付けしてると、祥平が後ろから触ってきた。

 

「そんなん後でいいよ。」

「けど…掃除が雑って…ん…」

「俺が後でやっとくから。」

「だめ…たんじょび…じゃん…あ…はあ…」

「一緒にジャクージ入ろう。」

「…さっき…しゃわ…した…もん…」

「せっかくだからアメリカン・ビューティーやろう。」

「は?」

 

もったいないし、可哀想っていう俺を無視して、100本はあろうかっていう真紅の薔薇があっという間に裸にされてしまった。大きなジャクージが薔薇の花びらで埋まる。

 

アメリカン・ビューティーね…そういえばそんなシーンあったっけ?

 

「これ一遍やってみたかったんだよな。」

「…似合うかも…」

 

俺がシケたバスタブでやったらお笑いだけど、ベイの夜景を見下ろす広々したバスルームの大きなジャクジーで、足をバタバタさせて嬉しそうな祥平には、この薔薇風呂…違和感ない!

 

「敬吾も入れよ。」

「うん。」

 

思わず薔薇の花びらを掻き分けて泳いでしまった。薔薇の香りがフワーっと広がって気持ち良い。確かに手足をバタバタさせて遊びたくなる。子供の頃、菖蒲とか柚を季節毎に入れてお風呂に入ったのを思い出した。

 

まあかなりグレードは違うけど。

 

どうせならバブルバスにしようっていうんで、二人で思いっきりバシャバシャお湯を泡立てた。これだけ風呂で騒いだのって、それこそ小学校以来かも。ギャーギャー言いながらふざけまわって、そこらじゅうに石鹸の泡と薔薇の花びらを撒き散らした。

 

「あーあ、これどうするの?掃除すんの大変だよ。」

「また下らないこと気にする…tomorrow, and tomorrow, and tomorrow…」

 

祥平が泡に埋もれて御機嫌で言うから、思わず聞いてみた。

 

「良い誕生日だった?」

「今までで最高!」

 

やっぱり可愛い…。泡まみれの祥平に俺も泡だらけの口でキスした。

 

Happy Birthday!」

 

二人でいられて良かった…。

ライン ドット

後書き

古い映画のネタは一応説明しておきます。66日っていうのは「オーメン」から。悪魔の子、オーメンの誕生日が66日。これは最近リメイクされたから、御存知でしょうか?この映画のオリジナルは、TVでこれでもかっていうくらい何回もやってて、しまいには怖くもなんともなくなりました。「次は首が飛ぶぞー!わくわくっ!」って感じ(笑)「アメリカン・ビューティー」は1999年公開のアメリカ映画。もう、そんな昔なんですね…嗚呼っ!凄く騒がれた映画ですけど…薔薇風呂のイメージしか記憶にない…()あ、でも最後に近所のホモフォブが実は…っていう落ちだった。

 

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