お誕生日II

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ライン ドット

けど俺ってば、肝心のこと忘れてた。その夜、ベットの中で祥平がボソッと、

 

「敬吾俺の誕生日忘れてるだろ?」

 

「!」

 

ひぇっ!そう、すっかり忘れてた!

 

66日。神も仏も信じない男に相応しい誕生日

 

「ご、ごめん。色々あったから。えーっと、あ、もうすぐだよね。6日は水曜日だからどうしようっか?土曜日にディナーとか行く?どっか行きたい所ある?」

 

「いいよ別に、子供じゃあるまいし。言ってみただけ。」

 

そう言われたけど、俺もだんだん祥平の性格を把握しつつある。ちょっとやそっとで傷つきそうもないのは外見だけで、実はかなり繊細だったりして。神経質なことは確かだし。

 

それに本当にどうでもいいって思ってるんなら、わざわざ言わないよな?

 

しかし、プレゼントっていっても難しい。贈り物は沢山貰ってるけど、貰った奴の顔なんか覚えてないって言うし、色々好みも煩い。服なんかちょっとでも気に入らないと絶対着ないし、返品してしまうに決まってる。一緒に買いに行ってもいいんだけど、俺に金使わせるの嫌がるし。

 

本?DVDCD?色々考えたけど、俺と祥平の趣味が違い過ぎてこれも良く分かんない。

 

あああと一週間ちょっとなにも思いつかない!

 

そして月曜日、会社に行くと恭介さんに呼ばれた。

 

「失礼します。」

どうぞ。カーラに聞きました。あのアパートは出たそうですね。

「あ、はい。あの色々ご心配おかけしました。」

 

俺のコンドはまだ人に貸してあるって知ってるし、それにハッピーな顔で気づかれたんだろう。

 

「良かったですね。」

「はい。あの、それで

「会社辞めるなんて言わないで下さいね。」

 

うっ。

 

「やっぱり。まるで引継ぎみたいに色々一遍に言われて大変だって、プロジェクトに参加してる子が言うから、ひょっとしてって思ったんですけど。もう僕と仕事するのは嫌ですか?」

「違います!俺、恭介さんの事は凄く尊敬してます。仕事が出来て、大人で俺、恭介さんみたいになりたいです。憧れてます。けど

「尊敬、ですか?」

「はい。もっと色々恭介さんと仕事して、教わりたい事あるけどでもあの

「祥平君のため?僕と仕事して欲しくないって言われました?」

 

首を横に振った。そう、祥平は何も言わないけど、だからって気にならないはずがない。

 

「違います。だけど、俺、この会社に8年も居るし、そろそろ別の場所でどれだけやれるか試してみたいんです。プロジェクトの方はちゃんと引継ぎ済ませて、俺の知ってる事は全部きちんと伝えますから。」

 

恭介さんが何も言わずに暫く俺の顔をじっと見た。

 

「あ、あの黙ってて済みません。もう少しちゃんと引継ぎをすませてからお伝えしようと。」

 

ふと視線を逸らすと今度は笑顔を向けてくれた。

 

「決心は固い、ですか。分かりました。それなら、やりたい仕事が見付かったら教えて下さい。僕がリファレンスになります。リッチも今回のプロジェクトでの君の仕事は評価してますから、きっとリファレンスになってくれますよ。」

「ありがとうございます。」

 

俺は思い切り頭を下げると、しばらくそのままの姿勢で居た。本当に恭介さんはいつも何から何まで先回りしてくれて、それなのにちっとも押し付けがましくなくて。この人が俺の恋人だったらすごく楽なんだろうけど。

 

(俺よりずっとあなたに相応しい人を見つけて、どうかお幸せに。)

 

「顔を上げて下さい。敬吾君ならきっと直ぐ次の仕事が見つかりますよ。バケーション溜まってるでしょう?インタビューに行くならそういう時は遠慮せずに使いなさい。」

「はい。」

「じゃあ、お幸せにね。」

 

俺はまたペコっと頭を下げてオフィスを出た。

 

俺って実は浮気性なのかなやっぱり恭介さんのこと好きだ。嫌いじゃないから寝たんだけど。祥平に対する気持ちと全然違うけど、それでもやっぱり好きだったんだ。

 

「ケーゴ、何ボーっとしてるの。」

「あ、ハーイ、カーラ。」

「クスッ、ケーゴって可笑しいわね。こないだからすごいアップダウン激しいし。今はハッピーなんじゃないの?彼女の所に戻ったんでしょ。」

彼氏

「え?」

 

しまった、思わず。日本語だったけどカーラ、日本語分かるんだろうか?

 

「あ、いや、あのあ、そうだ。カーラってボーイフレンドいるの?」

 

速攻でごまかすしかない。

 

「居るわよ。ケーゴにも紹介したじゃない、クリスマスパーティで。」

「ああ、そうそう。優しそうな人だったよね。」

 

カーラは仕事も出来るし、結構美人だけど、彼氏はカーラより背も低い位で、ルックスは決して良いとは言えなかった。この場合、とりあえず「優しそう」って言っとくのが無難だろう。

 

「フフッ。そうなの。今度、私のバースディにラスベガスに連れてってくれるのよ。」

「へー。」

 

成る程旅行か。けど、俺も祥平も今から急にまとまった休みは取れないしなー。

 

「彼のバースディはどうしたの?」

「クスクスッ。私のアパートでディナーをご馳走したのよ。すごく喜んでくれて

 

あーだこーだ話し続けるカーラに適当に相槌を打ちながら、これはいけるかも、って思った。

 

まさか頭にでっかいリボンを付けて、俺が贈り物っていう訳にもいかないだろうけど

 

ま、笑いは取れるだろうな。

 

溜まってるバケーションを取っていいっていう恭介さんの言葉に甘えて、俺は次の66日の水曜日、悪魔の誕生日、じゃなくて祥平のバースディに一日休暇を取った。サプライズにしようと思って、祥平には内緒で。

 

いつも通りの時間に一旦家を出て、まずグロッサリー・ショッピングに出かける。色々買い込んでから、祥平が家を出た頃を見計らって家に戻った。

 

それから時間を掛けて家中を磨き立てた。俺の掃除が雑だとか言ってたのを思い出して、窓枠やレーリングまで、指を隙間に突っ込んで丁寧に磨いた。午前中はそうやって掃除に潰れてしまう。

 

ランチは簡単に済ませて、その後、ズッキーニ・ケーキを焼いた。バターが使えないから、オイルで代用するんだけど、この加減が微妙。けど、祥平が一度作ってくれたのが、とっても美味しかったから、レシピ通りに材料を混ぜ合わせてオーブンに入れた。焼き上がったら、取りあえず見た目は奇麗に焼き上がった。

 

デコレーションも生クリームが使えないから難しい。パウダーシュガーを振り掛けて、その上から、ハッピーバースデー、しょーへーってチョコレートで書いた。更に、イチゴを薄くスライスして、それを小さなハートの型で抜いて、その小さなハートをケーキの上に並べて大きなハートを作る。

 

出来た!

 

それからポテトとほうれん草とマッシュルームのパイを型に入れて焼き、その間にキッチンの掃除をした。ケーキを焼くとどうしてもキッチンが汚れる。

 

祥平の好きなジュースも買ってきたし、後はシャワーして着替えて

 

ケーキと掃除に意外と手間取ってしまって、シャワーして髪を乾かす暇もなく、祥平が帰ってきた。

 

最近はまたディナーの時間には帰ってきてくれる。

 

まだ髪が濡れたままバタバタ階段を駆け降りた。

 

「お帰り、祥平!誕生日おめでとう!」

「ああサンキュー。お前なに慌ててんの?髪、濡れたままじゃ風邪引くぞ。」

「大丈夫。それより、座って!今ディナーにするからね。」

「何作ったの?いい匂い。」

「まあ、座って待ってなって。」

 

ちょっと乙女過ぎるかと思ったけど、やるならトコトンって決めて、キャンドルに火を灯してロマンチックにセッティングしたテーブルに祥平を座らせた。

 

これ

 

でも祥平がポカンとした顔で飾り立てられたテーブルを見たんで、急に照れくさくなった。

 

「今、パイ焼けたからね。」

 

って言うと、キッチンに逃げ込んだ。やっぱ馬鹿にされそう。パイ皿を祥平の前に置いて、

 

「ちょっと張り切り過ぎたけど、たまにはいいよな?」

 

って言ったら、真顔で返されてしまった。

 

「ありがとう。嬉しいよすごく。」

「うん良かった。」

 

なんて可愛い奴。普段言うこともやることも目茶苦茶なだけに、余計こういう時は可愛いんだよなー。

 

酒が飲めない祥平のために二人でジュースで乾杯した。そしたらパイを食べ始めた途端に電話が鳴る。

 

「俺が出るから食べてな。」

 

そう言って何気なく電話を取ると、

 

「ハッピーバースディ、ショーン!久し振りい、元気?これからそっち行っていい?渡したいものがあるんだけど。」

。」

 

知らない男の声。無言で受話器を祥平に渡した。

ライン ドット

 

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