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目が覚めると、真っ赤な空が広がって一瞬夜明けかと思った。目の奥が痛む。肘をついて少し身体を起こし、何度か瞬きしてよく見ると夕日が沈むところだった。
奇麗…。時間の感覚を失ったまま、ボーっとした頭で見とれてしまう。そのうちだんだん目と頭の焦点が合ってきた。
頭を振って考えようとする。ええーっと、今は土曜日の夕方?
腰…痛い…。
腰の痛みで少し前の自分の狂態を思い出して、恥ずかしくてベットに倒れ込むとシーツをかぶった。
「もっと、もっと」って喚き続けたせいか、喉まで痛い。
変なクスリを使われた時もひょっとして同じような状態だったのかもしれないけど、俺にはまったく記憶がない。
けど…さっきは正気だったから全部覚えてる…。
「敬吾。起きたの?平気?」
祥平が階段を上がってきたけど、どんな顔していいか分からなくて、とっさに背中を向けて寝たふりをした。
「…敬吾…」
そっと肩に手を置かれて、思わず背中がピクっと震えてしまう。寝たふりなんて直ぐばれてしまった。
「敬吾…怒ってる?」
怒ってるって訳じゃないけど…。
俺が黙ってると、祥平が俺の隣に身体を滑り込ませて、俺をそっと後ろから抱きしめた。
「ごめんね。敬吾が嫌ならもうあんなことしないから。ホントだよ。あんなの全部捨てちゃうし。出て行くとか言わないで…。」
髪に指を絡ませて頭を撫でられると気持ち良い。俺はクルっと振り向いて頭を祥平の肩に凭せ掛けた。耳の中に囁く。
「怒ってないけど…ああいうのはもう止めよう…。俺は…祥平に優しくされる方がずっと好き…。」
「敬吾…」
顔を見られるのが恥ずかしくて、両手を背中に回すとギュッと肩に顔を押し付けた。あんなに自分から腰振っといて、嫌も何も無いんだけど…まああれはしばらくしてなかったせいにしておこう。
「ごめんな。けど、敬吾が無神経なこと言うからだぞ。あいつとセックスして良かったなんて…。」
「え?だって…それは祥平が言えって…」
「だっから…普通はもうちょっと考えるだろーが。全然良くなかった、やっぱり祥平の方がずっと良い、ちっとも感じなかった、イケなかった、etc。」
「でも、嘘ついたら祥平怒るじゃん…」
「嘘って…まだ言ってるし。お前っていい子ぶってる割には無神経だよな。」
なに!
ムッとしたけど喧嘩したく無かったから黙ってた。
確かにああいう場合は「最低だった。」とか言っとけば良かったんだろうけど…何かそういう嘘つくのもやだったんだよな。セックスは悪くなかったけど、それでも祥平が好きだよ、みたいな。
変かな?
「大体さ、猫の名前もおかしいだろ。いい加減ムカつくし。」
「そんなの気にしてないかと…。」
「だからそれが無神経なんだってば!俺の方から言いにくいだろ、ちょっとは気使え!」
そう言えばバカ猫、バカ娘って呼ぶけど…名前で呼んだ事無かったかも…。
俺ってひょっとして…最低?
「分かった、新しい名前考えるよ。」
「ショーちゃんっていうのはどう?」
「…女の子だから…」
「祥子ちゃん。」
「うーん。呼びにくい…かな。あ、アヤちゃん、アヤにする!」
「アヤ?」
「そう!やっぱり少しは似た名前じゃないとアキも、えっとアヤちゃんも混乱するし。」
「…あ…そ…」
その夜は久し振りに「家族」みんなでTVを見た。
祥平がカウチの端っこに胡座をかいて座って、俺がその膝に頭を乗せて横向きに寝そべる。アキ、いやアヤがその俺の胸の前のスペースにビローンとストレッチして寝転がった。キャンディとシンディはカウチの前に置かれたそれぞれの丸いクッションの上でやっぱり伸びてる。
Love in the Afternoon
PBSでやってる古い洋画は「昼下がりの情事」。考えてみればいい年のおっさんと、若い女の子のクリーピーなラブ・ストーリーなんだけど、おっさんがゲーリー・クーパーで女の子がヘップバーン、脚本がビリー・ワイルダー、セリフが面白くてヘップバーンが健気で…笑っては、ホロっとしたりして…。
本当は何にも知らないくせに、年上の遊び人を落とそうと必死に遊びなれた振りをする女の子。器用な振りが辛くて本当の気持ちが目に現れて…。カメラがアップで憂いを含んだ彼女の表情を映し出す。何か泣けてしまった。
嘘臭い夢物語。そう言ってしまえばそれまで。けど…彼女のあの表情。悲しい想いを知ってる顔。大切な人を失う辛さを。
人と人との繋がりなんて脆い。どんなにそうならないようにと願っても、気持ちはいつか離れて終わってしまう。
小猫だったアヤちゃんを引き取った時、ちっちゃな彼女のお腹の毛はツルツルに剃られていた。捨て猫をこれ以上増やさないよう、レスキューセンターでは産まれたばかりの猫にも避妊手術を行う。雄の手術は簡単だけど、雌猫にとっては大手術だ。今でも思い出す痛々しい手術の後。
キャンディとシンディも手術を受けてる。大型犬の場合は発情期に人を襲う場合もあるらしいからしょうがないって祥平も言ってた。
どんなにセックスしたって、俺が祥平の子供を産めるわけでもない。
二人と三匹の寄せ集めの「家族」。結婚して子供を産んで、「普通」に暮らしてる俺の兄貴や両親からは多分「家族」とも見做されない。それでも俺にとってみんな大切な家族。守りたいずっと…。
そんな事を考えながら映画を見てたら後半ポロポロ泣けてしまった。祥平に見つかるとまた笑われると思って、鼻をグズグズいわせないようにしてたのに、俺が泣きそうなシーンて大体分かるみたいで、顔を覗き込んでチェックされる。それでもなるべく平気な顔して無視してたのに、わざわざ顔に触って泣いてるって確認されてしまった。
「…oh honey…」
顔は笑ってるけどそれ以上何も言わないで、頭を撫でてくれる。俺はアヤちゃんを動かさないようにソロソロ起き上がって、祥平の横に座ると、奇麗な頬にキスした。やりたいよっていうキスじゃなくて、好きって伝えるためのキス。
…のつもりだったんだけど、祥平の膝に抱え上げられて唇にキスされると…
はあっ…
大抵明け方一度、トイレに行きたくて目が覚める。
で、祥平と一緒に住みだしてからは、トイレを済ませた後、Dr.ブロナの液状石鹸で必ずアソコを奇麗にすることにしてる。
突然、何の話?
ほら、この石鹸、オーガニック素材を使って作られてるから、汚れが奇麗に落ちて、しかも、ここが肝心なとこだけど、使った後、洗い流さなくてもOKっていうのが優れもの。
液状で売ってる石鹸を別の容器に入れてお湯、もしくはお水で15から20倍に伸ばせば、そのままドゥーシュとして使えてしまうわけ。バスルームの必需品。小さな容器はなぜかリビングにも置いてあったりする。
トイレに起きる朝方、時々とってもムラムラしてることがあって、そういう時はDr.ブロナのお世話になる。そうでなくても一応奇麗にしてからベットに戻る。
俺がやりたい時はベットに戻った後で、そっと祥平の肩に2、3回キスする。その合図で目を覚ました祥平が大抵はしてくれる。もし煩そうに無視されたら、相当疲れてるってことだから我慢する。
俺にその気があんまりなくても、ベットに戻ったら祥平の方から抱き着いてくることもある。よっぽど疲れてなければ俺もしてあげる。
朝のこの慌ただしいやつが、結構いい。手間暇かけずに即実行。いわゆるクイッキーってやつ。その後また一眠りするのがまた嬉しい。
だから何が言いたかったかっていうと、つまり週末はじっくり、週日は時間が無ければお手軽に、取りあえず毎日やってた俺達が、ここ2ヶ月近く触れ合って無かったわけだから、キスされてしまうと…さっきあんなにやったとこなんだけど…またやっちゃおうかってなるわけで…はあ…。
「…ん、しょーへ…いい…ああ…」
やたらとガッついて祥平に跨って自分から腰を振り出す俺に、
「すげー、積極的。こんなことなら、たまには放ったらかしにするのもいいかな。」
「や…も…ぜったい…やだ…はああ…あん…」
われながら感心することに、めずらしく俺が上に跨ったまま最後まで出来てしまった。最近全然トレッドミルにも乗ってなかったし、運動してない上に、さっきので既に結構腰に来てたのに、凄い!
知らないうちに太股に筋肉ついたかな?
「なに馬鹿なこと言ってんだよ!敬吾がシンドイだろうと思って、サッサとすましてやったんじゃん。大体お前が筋肉ムキムキになったら気持ち悪っ!」
ふん!何とでも言え。そのうち体力つけて…襲ってやる。
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後書き
こんなんじゃお仕置きとは言いませんね(汗)
お仕置きっていうからにはハードなプレイ、とも思ったんですが、バイブでガタガタ文句を言う受けが、どう考えても大人しくそういうお仕置きに耐えてくれるとは思えず、断念(^_^;)痛いの嫌だから(笑)もう少しレベルの高いお仕置きを予想されていた方、へたれなお仕置きで申し訳ありませんでした(涙)
コxクリングというものについては「日記もどき」に書いてみましたので、宜しかったら読んでみてね(「リング」2007.9.23)