![]()
「別に危害を加えられたという訳では無いんですけど、アレは結構キツかったですね。まあ、見せ付けられたっていうか…。」
「見せつけられたって…。あの、何を?」
「だから、敬吾君が祥平君に抱かれてる一部始終を。なんか…嬉しいのか…辛いのか…ああいう状況は初めてでしたけど、結構興奮するもんですね。」
頭…真っ白…。
バーで恭介さんに目を付けた祥平は、彼を家に誘ってその気にさせといて、キャンディとシンディを嗾けた。彼を動けなくしといて…目の前で俺を…。
「俺と犯りたきゃ相手してやってもいいって言われましたけどね。僕は最初から敬吾君目当てでしたから…ちょっと勿体無い気もしましたけど、お断りしました。多分本気じゃ無かったでしょうし。彼、ネコちゃんじゃ無いでしょ。」
ご覧の通り…あんな顔しててそうなんです。
「敬吾君、僕の方見てアキ、アキって。アキが見てるからヤダって。それで余計祥平君頭に血が上っちゃったみたいでしたよ。」
「!」
俺、そんな事…。恭介さんとアキは全然似てないのに…。でも時々…雰囲気が…。
あ!
「ひょっとして…俺に仕事回してくれたのって…あの…。」
「それは違います!」
キッパリ否定してくれるのは嬉しいけど、考えてみればあれから俺以外に社内で仕事内容が変わったりとかした奴はいないし、全員の仕事内容の見直しって言うのは単に口実だったんじゃ?
「敬吾君の事が気になって履歴書をチェックしたのは確かですけど、能力があるのに詰まんない仕事しか回されてないと思ったのは本当ですよ。狩野君もどうしてもっとキチンと考えて上げなかったんでしょうね。多分後ろ暗い所があるからなんでしょうけど…。僕にはそういう弱みはありませんからね。これからもドンドン仕事を任せますよ。」
弱み、か。確かに俺はアキにとっては後ろ暗い秘密だった。
「と言っても、僕としては敬吾君さえよければ、是非プライベートでも付き合いたいんですけどね。」
「え?」
「ああいう所を見せられたからっていうだけじゃなくて、この1ヶ月…敬吾君の真面目で可愛い所に惚れ込んじゃいました。何でも直ぐ顔に出て、嘘の付けない所も。ああいう子供みたいな子は止めて、僕と付き合いませんか?敬吾君の事、大切にしますから。」
優しい声で…ズルイ嘘。
もうこんな風に騙されるのはごめんだと思った俺は、必要以上に大声を出してしまった。
「止めて下さい!もう沢山、奥さんや子供が居る人は…もう沢山なんです!」
前方を見詰めたまま、恭介さんが静かな声で言った。
「こっちに来る前に離婚しました。子供は居ません。僕は狩野君とは違いますよ。」
「す、済みません、俺、つい…。」
「構いませんよ。僕は本気ですから、考えてみてくれませんか?僕と付き合う事。僕の事少しは気にしてませんでした?それとも、僕の己惚れかな?」
どーして俺の周りって、こういう自信過剰なタイプばっか?
「着きましたよ。」
「あ!」
いつの間にか家の前に着いてた。そういえば知ってるんだった、祥平の家。ハイウェイいつ降りたのかも気づかなかった。
「あ、あの…俺…今日は…えっと…ありがとうございました。」
なんて言っていいか分かんない。
「セクハラになると思って、我慢してたんですけどね。そういう顔されると…。ま、今夜はただの友人で、上司じゃないってことで…。」
え!ええー?
シートベルトを外して恭介さんが俺にゆっくり顔を近づけてきた。
キスされる!そう思ったのに、咄嗟に目を瞑ってしまった。でも軽くキスされたただけで、すぐに唇が離れてしまう。
「?」
思わず目を開けると、恭介さんの顔が近くて「あ…」って声が漏れた瞬間、今度は舌が滑り込んできた。
抵抗しなきゃって思うのに、俺は逆に恭介さんにしがみ付いてた。
座席に押し付けられて頭を抱え込まれ、唇や舌を貪られると、身体の力が抜けてしまって、されるままになってしまう。いつの間にかシートが倒されて恭介さんの身体が俺に覆い被さっていた。
「敬吾君、勃ってますよ…。気持ちいいんですか?」
俺…今何してた?
「や、止めて!」
「止めます。僕と付き合うって言ってくれたら。」
「俺、俺には祥平が…。」
「だったらどうして僕とこんな事するんですか?」
「ん…あ…。」
嫌だ、嫌!祥平…祥平じゃない!
ジタバタ手足を動かして抵抗しようとしたけど、もう押え込まれてしまってるから思うように動けない。その時…ドカッていう音がして、ピィイイイイイーっていうカー・アラームの音が鳴り響いた。
「開けろ!」
祥平!?
車の窓が曇っててよく見えない。恭介さんが身体を起こすとアラームを切った。跳ね起きて外を見ると祥平が車のドアを蹴り上げてたから、俺は慌ててドアを開けると外に飛び出した。
「祥平!」
怖い顔で今にも飛び掛かりそうに身構えてた祥平が、呆気に取られた顔で運転席から出てきた恭介さんを見た。
「お前…こないだの…。」
「どうも。敬吾君の上司で野島 恭介って言います。」
「な!」
「敬吾君、また明日ね。」
しばらく車の後を睨み付けてた祥平が、漸く振り返ると言った。
「サッサと中に入れ!」
「…。」
ああいう所見られたんだから怒るのは分かるけど、元はといえば祥平のせいだ。
「説明してもらおうか。」
腕を掴まれて家に引きずり込まれると、冷たい顔で聞かれた。
「説明って…その、ライト点けっぱなしにしてたら、バッテリーが死んじゃって…それで家まで送って貰っただけで…。」
「何であいつが敬吾の上司だって黙ってた。」
なに言ってんだ、こいつ!?
カッとなった俺は思わず怒鳴った。
「俺だって今日初めて知ったよ!何が説明しろだよ。俺に嘘ついてたの祥平だろ?全部恭介さんに聞いた。何も無かったなんて嘘ばっかり!皆の前で俺に…俺に…酷い事した癖に!」
祥平の目がスッと細くなった。
「…恭介?えらく親しいんじゃない?俺の事相手にしないと思ってたら…あいつとやってた?」
「ば、馬鹿!何言ってんだよ!」
「さっきは随分盛り上がってたけど?」
「あ、あれは…あれは…ちがっ!」
「どう違うの?隠れてコソコソ浮気なんて最低だね。」
「違う!祥平だって、俺の事いつも無視して…。どうせ祥平だって誰かと適当に遊んで…あ!」
引っぱたかれた…。祥平が俺に手を上げるなんて…。
![]()