健康診断

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ライン ドット

次の日背中に見事な青痣が出来てた。さすがに済まなそうな顔してた祥平に、これからはベットでするって約束させた。

 

けど、

 

「敬吾さー、少し運動した方がいいんじゃない?」

 

だと。

 

背中の痣は運動不足とまったく関係ないっ!

 

だけど、まあジムに行こうと思ってるだけじゃ駄目なのは分かってる。けど通勤時間長いし、週末もあっと言う間に過ぎてしまうし、ジムに行く時間を作るのは難しい。

 

「土曜日フープしない?」

「ふーぷって…バスケ?」

「そう。俺、昼間学校でやってんだけど、週末も寮に住んでる奴等ジムでやってるみたいだからさ、一緒にやる?結構良い運動になるぜ。」

 

バスケかー。高校までは一応サッカー部だった。全然下手糞で試合に出たことないけど、走り込みとかは皆と一緒にやってた。サッカーに比べればバスケなんてコートも狭いし大したことは無さそう。

 

「俺、バスケなんてジムの授業でやった位だけど。」

「ルールは分かる?」

「うん。ドリブルしてシュートだよな。」

「ま…そ…だな…。」

 

土曜日は小雨が降ってた。ジェッタに乗ってUCSFのキャンパスに行く。祥平がラブに寄ってくって言うんで着いていった。外見はひどく古びた茶色の建物に入ると、中は割と新しい。

 

エレベーターを3階で降りると廊下の両側にズラっと同じようなドアが並んでいる。土曜日なのに開いてるドアから中を見ると何人か学生がいた。祥平がその中の一つのドアに入って行くと、そのうちの一人から声が掛かった。

 

「あれ、ショーン。珍しいじゃん。土曜は用事あるんじゃなかったの?」

「ああ。7番をセントリフュージに掛けとこうと思って。」

「俺に電話してくれればスタートしといたのに。」

 

意味不明の会話を交わす祥平も、ラブにいた男の子も普通の服装だった。ラブって言うから白衣のコートを着るもんだと思ってたけど違うみたいだ。祥平が見た事の無い機械を黙って操作すると、それきり二人とも何やら黙々と作業を始めてしまった。

 

俺が邪魔にならないように廊下で待ってると、白衣を着た人がビーカーや試験管の入った箱を抱えて通った。オペ用みたいなゴム手袋に、マスク、ゴーグルまで装着してる。一体あの試験管の中身は何なんだ?

 

「ごめん。終わったから。」

「え?早かったね。」

「ああ、後は機械がやるから。」

 

どうして祥平や祥平のラブの男の子は白衣を着てないのか聞いてみた。

 

「ああ、俺等の居る所はどっちかっつーとドライ・ラブだから、まあホントはラブ・コート着た方がいいのかもしんないけど。」

「どらい?」

「主にコンピューターしか置いてない。」

「さっき白衣にマスクとゴーグルで完全防備の人が通ったけど…。」

「多分、ハザード…危険物扱ってんじゃないかな。」

「へー。」

 

医学部のラブって言っても色々あるらしい。実験動物とか死体とかゴロゴロしてたらどうしようと思ったけど、そういう雰囲気じゃない。

 

祥平のラブなんて、天井から下がったでっかいフィッシュ・ネットにイルカのヌイグルミとかとかヒトデの模型がぶら下がってるし、壁に等身大よりでかいジミー・ヘンドリックスのポスターが貼ってある。

 

土曜日のキャンパスは人が少なくて静かだ。病院の横にあって、普段はパーキングを見つけるのが大変だって言ってたけど、今日はジムのすぐ横のスペースに車が停められた。UCSFのキャンパスはサンフランシスコ中にあって、祥平の学部もメイン・キャンパスにあるラブの他にも23個所散らばってるらしい。

 

広々したバスケット・ボール・コートにはもう何人か学生がいて、ボールが床にぶつかる音や、シューズが床を擦るキュッキュッっていう音がこだましてた。祥平が簡単に俺を紹介してると、また何人かジムに入って来た。

 

みんな若い。大学院生もいるみたいだけど、学部生も混じっていて、平均年齢が若そうだ。バスケって言っても普段まったく運動してない俺がついて行けるんだろうか?

 

・・・・・・・・・・

 

30分でダウンしてしまった。コートが狭いから大丈夫なんて…甘かった。バスケで疲れた覚えなんて無いんだけど、やってみたらこれがシンドイ。足がモタモタするし、シュートしても入らない。しまいには祥平に邪魔だからって追い出された。

 

「敬吾、お前バスケのルール知らないだろ!」

「一応知ってる…。」

「じゃあ何でボール持って歩くの?」

「それは…つい…。」

 

壁際にバッタリ倒れて喘いでると、砂色の髪の若い男の子がやって来た。確かジェイとかジェスとかいったっけ。

 

「ハイ!」

「ハイ…。」

「ねえ、あんたショーンと一緒に住んでんだろ?」

「あ、うん。」

 

祥平は学校でも自分がゲイだってことは隠してないらしい。例によってジロジロ見られた。こいつも「お仲間」らしい。俺を見る目つきがそれっぽい。

 

「ふーん。あんたさー、体力無さそうだけど、よくショーンと付き合えるよねー。あいつ最近全然遊んでくれないんだぜ。あんたよっぽどナニが良いわけ?」

「!」

 

何か言い返そうと思ったけど、とっさに英語で何て言っていいか分からなくて、睨み付けた。それをどう取ったのか、そいつが急に低い声で囁いた。

 

「俺とも一遍遊ばない?3人でもいいよ。俺、ショーンには硬さじゃ負けるけど、大きさは負けてな…痛っ!何すんだよ!」

 

祥平投げたボールがそいつの後頭部を直撃した。

 

「人数足りねえんだよ、戻れ!」

「オッケー、オッケー。おーこわっ!」

 

ニヤニヤ笑いながらコートに戻るジェイだかジェスだかを睨むと、祥平が聞いた。

 

「あいつに何言われた?」

「その…。」

「誘われたんだろ!そんなとこで股広げて、舌出して喘いで…犯って欲しいって言ってるみたいなんだよ!」

「な、俺は別に…。」

「大体敬吾は自覚なさ過ぎ。ガードが甘いっていうか、全然無防備じゃん。いい加減学べよな!」

 

言いたい事だけ言うとサッサと行ってしまった。疲れたから喘いでただけで…何でそこまで言われる?祥平の友達がオカシイんだろ?絶対俺が悪いんじゃない!

 

祥平に言われた事を気にしてって訳じゃないけど…膝を抱えて座った。

 

皆と比べて背が高い訳じゃないのに、祥平は目立つ。切れのいい正確な動き。遠くから軽くシュートが入る…。片足を軸にして素早く動いて、ドリブルが早い。ジャンプも高くて手首が奇麗にスナップする。

 

ボケーっと見とれてると祥平と目が合った。ドキっとして思わず目を逸らしてしまう。

 

「タイムアウト!」

 

って叫んだと思ったら、祥平がボールを誰かに渡して俺の方に歩いて来た。

 

「今見とれてたろ?」

「う、うん。」

「惚れ直した?」

「…うん。」

 

悔しいけど否定してもどうせバレバレ。唇にチュッて音を立ててキスされた。フワッと祥平の汗の匂いがする。さすがに少し息が荒い。髪が少し汗に濡れてる。暑いからって上半身裸だし…。

 

「ち、ちょっと…皆に見られる…。」

「そんなん誰も気にしないよ。もうすぐ終わりにするからちょっと待ってて。」

「う、うん。」

 

その軽いキスでヤバイ状態になりつつあった俺は、コートの外に出てバスルームで頭を濡らした。

 

初めて祥平にあった時の印象は今でも同じ。あの時は周りから浮いてるって思ったけど、それは言い替えれば目立つって事だ。何をしていても誰といても祥平は目立つ。それは俺があいつに惚れてるからってだけじゃないと思う。

 

あいつの周りだけ空気が違うんだ。立ってるだけでナイフみたいな鋭い印象がある。触れたらこっちが怪我しそうな、スッと切れそうな感じ。周りを拒否して一人で立ってる感じだ。それでも周りの方が勝手に惹かれてしまう。

 

「あいつ何か苦手な事ってあるのかなー?」

 

頭は良さそうだ。中学、高校と学年をスキップして大学は19歳で卒業。22歳で博士課程ほぼ終了。来年くらいからポスト・ドクトルとしてラブでの就職先を探すらしい。将来の夢はガンの根絶と、ついでに…ノーベル賞受賞。

 

頭が良いって言うか…天才?

 

料理も上手い。よく野菜だけでああ色々毎日作れるもんだっていつも感動する。

 

昔バンドやってたとかでギターも弾ける。明らかにスポーツも得意。つーか、すげーカッコいい。

 

それに比べて…俺、カッコ悪過ぎだし。

 

絶対、絶対身体鍛えよう!ジムが無理なら、ジョギングでいい。このままじゃ余りに情けない!

 

バスルームから出てコートに戻ると、祥平に怒鳴られた。

 

「どこ行ってたんだよ!」

「トイレだけど…。」

「ったくもう。心配するじゃんか、勝手にウロウロするな!」

「あのさ…子供じゃないんだから…。」

「子供でも敬吾よりマシ!」

 

何で?俺が何したんだよ!

 

汗臭いから皆と一緒にシャワー浴びて着替えたかったのに、祥平に引きずられて家まで我慢させられた。誰も俺の身体なんか見ないっつーに!

ライン ドット

 

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