お散歩

9

ライン ドット

「何だよ、傷つくなー。さっきの本気で痛かったんだぞ。俺にあんなに怒るんだから、敬吾も俺のどこが好きか言え!」

 

「そ、それはだから…最初は凄く奇麗な子だなーと思って…。」

「やっぱ顔じゃん。」

「でも、今は違う…あ、今も祥平の見た目は好きだけど…俺が祥平を好きなのは…えーっと…。」

 

いきなり言われても上手く言えないっ!

 

「俺が優しくて思いやりがあっていい男だから?」

「うーん、自信満々で、強引で…俺には無い所が好き…。」

「それ…誉めてる?」

「そうかと思うと…時々びっくりするくらい優しいから…。」

 

祥平が俺の髪をいじりながら囁いた。

 

「時々って…俺はいつも敬吾には優しいだろ?」

 

返事はキスに塞がれた。

 

唇への長いキスの後、祥平が俺の涙の跡を軽くキスでなぞった。その唇がだんだん首筋から鎖骨に移動して、乳首に辿り着くと舌が優しく先端を撫でまわす。

 

「…はあ…ん…。」

 

「な、敬吾…一緒に住もう。いいだろ?俺とずっと一緒にいよう。」

 

「…ん…んん…。」

 

乳首を軽く噛まれて、身体を捩ると今度はアソコを握られた。包み込むように扱かれると、グチュっていう音を立てて先端が濡れ出すのが分かる。

 

「…うんって言えよ。」

「あ、ああ…うん…う、うん…。」

「よし!」

「しょーへ…ああん!ああー!」

 

ズルイって思ったけど、結局俺は祥平と一緒に住む事を承知してしまった。

 

いいのかなー?俺、祥平の事そんなによく知ってるわけじゃないし…。

 

・・・・・・・・・・・

 

恋する二人が一緒に住む事になりました。目出度し、目出度し…なんてハッピー・エンドで終わるはずもなく、祥平と一緒に住むと決めてからが大変だった。

 

昔の俺ならアキに一緒に住もうなんて言われたら、コンドを売っぱらって、何もかも捨ててアキの所に走ったはずだ。けど俺もさすがにそこまで馬鹿じゃない。

 

会社のフィリピン人の女の子のボーイフレンドが、親の不動産会社を手伝ってるのは散々聞かされてたんで、彼女にプロパティ・マネジメント・カンパニーを推薦してもらって、俺のコンドは人に貸すことに決めた。

 

ケーゴは彼女と一緒に住むらしい、っていう噂がパッと広まった。って言っても皆それ程他人に興味があるわけじゃないから、普段仲良くしてる同僚と噂好きのアドミの女の子達に色々聞かれただけだけど。

 

カウチやテーブル、ベット、デスクや椅子、キャビネットや本棚は、最初の3ヶ月は25ドルっていう、ちょうど車一台分の大きさのレンタル・スペースにキープしとく。

 

TVDVD、電子レンジやオーブン・トースターは、本やCD、鍋や皿を詰めた箱と一緒に、祥平の家の開いてる部屋に置かせてもらうことにした。

 

俺がいつでも帰ってこれるように引越しの準備をするのを見ても、祥平は何も言わなかった。

 

(ま、あいつも色々あったみたいだし…これが大人の知恵ってやつだろ。)

 

昔の俺はそれこそ怖いもの知らずだった。今はそうはいかない。ちゃんと自分に逃げ場を残しておかないと。

 

バゲージっていう言葉がある。「荷物」、でもエモーショナル・バゲージって言えば過去の色々ってことだ。

 

何もしょってなくて身軽だった俺は、アメリカに来てアキと別れ、でっかい「荷物」を背負う事になった。中国人のおばさんも、離婚して「荷物」を背負って生きてる。両親が離婚してる2世の男の子は、まだ若いのにもう彼なりに「荷物」を抱えてるのかもしれない。

 

「荷物」が重くなるほど…簡単に心を開けなくなる。自分を守る事を優先させるようになる。それが大人になるって事なのかもしれないけど…。

 

祥平も「荷物」の重さを知ってるように思えた。

ライン ドット

 

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