お散歩

8

ライン ドット

終わった後もしばらく俺と繋がったまま、祥平は後ろから俺を抱きしめていた。そっと髪を撫でられて、全身が敏感になっていた俺はビクンと背中を反らせてしまう。

 

「…なあ、ホントどうした?何かあった?」

 

ああ…言わなくちゃ。ちゃんと話があるって言うんだ。

 

俺さえ何も言わずにいれば、このままもう少し一緒にいられるはずだって心の声が囁く。俺が黙っていると祥平が身体を離して俺を仰向けにした。

 

そんな顔で見られると…。

 

「なあ、敬吾。俺と一緒に暮らさない?」

 

(そう一緒に…。)

 

「え、ええー!」

 

俺は思わず身体を起こすと大声を上げた。

 

「耳元で喚くなよ。んな驚くか?」

 

(驚くだろ、普通!)

 

「だって、今、一緒に住もうって…。」

「嫌?」

「嫌とかじゃなくて…その…だって…それどういう意味?ルームメートが欲しいってこと?それとも…。」

「俺は敬吾と住みたいんだよ。毎日一緒にいたいんだ。嫌か?」

 

頭が混乱する。

 

順番がおかしいだろ?ちゃんと好きだって言われた覚えないし、俺と真剣に付き合ってるのかどうかも分かんなかったのに、いきなり一緒に住もうなんて!

 

「…どうして…俺なんかと…。」

「俺なんか、ってのはやめろ。」

「けど…。」

「敬吾さー、自覚ないみたいだけど、お前、アレがすっげえいいんだよ。本人分かってないとこがさ、また可愛いっつーか。」

「は?」

 

(何それ?)

 

「…俺が感じ易いって事?」

 

それはアキにも言われた事があったけど…。

 

「ま、それもあるけど…なんつーか、そのアソコがズバリ最高なんだよな。ああいうのをほら、日本語でなんつったっけ?名器っつーんじゃないの?締まりはいいし、中に入るとヌルヌルしてこう吸い付いてくるっていうか...。」

「…名器…。」

「そう。俺が何やっても、お前っていちいちリアクションも最高だし。どう考えても、お前が俺のベスト・ファッ…痛っ!痛ったい!何すんだよ!」

 

俺は拳固で祥平の腹を思いっきり殴り付けた。顔殴られなかっただけ、マシだと思え!

 

「…帰れ。」

「おい、何怒ってんだよ。俺は誉めたんだぜ。」

「帰れ、もう二度と来るな!そんな事しか言えないんなら帰れ!」

 

悔しい、涙が出そうになるのが。

 

俺が真剣に悩んでるのに、こいつにとって俺は単に気持ちのいい穴なわけ?便利に突っ込みたいから一緒に住みたいって言われて、ハイハイって喜ぶと思ってんだろうか?俺をどこまで馬鹿にする気だよ。

 

「敬吾…。」

「いいから…帰れ。もうメールも電話もするな。俺にかまうな。」

「…ごめん…俺、無神経なこと…。」

「帰らないなら俺が出てく。俺が戻るまでに出て行かなかったら、警察呼んでやる。」

 

怒り狂って立ち上がろうとする俺を、祥平はどういうコツがあるのか簡単に押え込んだ。俺は必死に全身をバタバタさせて抵抗したけど、祥平に圧し掛かられて動けなくなってしまった。このまま犯られてしまうのかと思うと、悔しくて涙が溢れた。

 

「頼むから落ち着け…話聞いてくれよ。」

「もう充分聞いたよ。お前の気持ちはよーく分かったから。とっとと次の相性のいい穴を探してくれ。」

 

祥平が俺の頭を抱え込むと耳元でため息を吐いた。

 

「だから悪かったって…。セックスがいいのはホントだし、俺はそれも大事なことだと思うけど…敬吾が聞きたかったのはそんなことじゃないんだよな。」

 

ああ…畜生、涙止まらない。

 

「…ヒック…も…いい…帰…れ…。」

 

「帰らない…。俺は敬吾が好きだよ。初めて会った時からずーっと…。俺、敬吾に一目惚れしちゃったし。」

 

「…嘘…そんなん…うそばっか…。」

 

「嘘じゃない。敬吾が出てくるまでずっと待ってたろ?」

 

(あ…。)

 

「だって、だって俺の事ヘタレって言って馬鹿にして…。」

 

祥平がまた溜息を吐いた。

 

「腹立ったんだよ…。別れた男の写真持ち歩いて、俺に触られて感じてるくせに、そいつの話しながら泣くし。」

「そ、それは祥平がしつこく聞くから…。」

「気になるじゃん。10年も付き合ってたって聞いたら。」

「けどあんな乱暴に…。」

「…それは…俺も実はあん時久し振りで…まあ結構溜まってたっていうか…。」

 

はああ…。

 

「俺のどこが良かった訳?」

「ん?」

「だから…俺…祥平みたいに奇麗とか目立つ訳じゃないし…。」

「あ、ああ…うーん、説明しようとすると難しいなー。」

 

しばらく言葉を選ぶように考えて込んでから祥平が言った。

 

「クリーンに見えたんだ。」

「クリーン?」

「うん、そう。」

「…病気持ってなさそうとか…そういう意味?」

 

(さっきと同じなんだよ、言ってる事が!)

 

「…うーん、それもあるか…でも、それだけじゃなくって…何ていうかこう、清潔感っていうの?そういうの分かったんだよ、パッと見た瞬間。ああ、こいつは朝起きて朝飯食って、真面目に生活してる奴だなっていうのがさ、見えたって言うの?」

「…それって、単に俺が普通って事じゃ…。」

「そう、それ。すごくノーマルな奴だって思ったんだ。」

 

頭痛くなってきた。何言ってんのこいつ。

 

「全然っ、分かんない!」

 

「だから…俺、前に付き合ってた男がとんでもないサイコでさ。最初は分かんなかったんだけど、最後ホントやばい事になってて。それで犬飼いだしたりしたんだけど。敬吾はさ、安心して一緒にいられそうで…。俺、そういうのに餓えてたんだよ。だから声掛けたんだ。」

 

「それって…誉めてんの?」

 

「当ったり前じゃん!俺が自分から誰かと一緒に住みたいと思ったのなんて初めてだよ。」

 

(そっかあ…。)

 

「あー、やっと笑った!」

 

ギュウウウっと抱きしめられて苦しいけど…嬉しかった。

 

(清潔…か。)

 

「笑った顔も好きだよ。初めて会った時、敬吾に笑いかけられてスッゲー嬉しかった。」

「そう?でも俺のこと睨んでなかった?」

「ドキッとしてさ、咄嗟に睨んじゃったかも。」

「それ変だよ!」

 

抱きしめられてクスクス笑ってると、祥平が聞いた。

 

「敬吾こそ俺にホイホイ付いて来たのは何でだよ?」

「え?」

「俺の顔が気に入った、とか言うなよ。」

 

(そ、それは…。)

ライン ドット

 

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