お散歩

6

ライン ドット

“今日はラブに行く。よく寝てたから起こさなかった。また土曜日に会おう。XOXO

しょーへー”

 

また土曜日に…会おう…

 

正直に顔がヘラヘラしてしまった。すっげー嬉しかったりして。

 

さっきまでの落ち込みからコロッとウキウキ気分になると急にお腹が空いてきた。

 

祥平が詰めてくれたらしい、昨日の残りのパスタがタッパに残っていた。皿もディッシュ・ウォッシャーの中にキチンと並んでて、鍋も洗ってある。

 

(あいつホントに優しいじゃん。へっへっ、また土曜日に…だって!)

 

冷たくても美味いパスタを食べながら頭の中にハート・マークが飛び交ってしまう。と、電話がなった。

 

「ハロー?」

「俺、起きてた?」

「あ、祥平!うん、今学校なの?」

「ああ、ごめんな。今日はどうしても出ないと行けなくて。」

「ううん。でも、起こしてくれれば良かったのに。」

「けど、気持ちよさそうに寝てたし…。敬吾もこないだ俺が寝てる間に帰ったろ。」

「あ…。」

「黙って帰られるとヤなもんだよな。」

「ごめん…。」

 

でもあの時はあの場限りのことだって思ってたし…。

 

「あのさ、携帯の番号教えてよ。」

「あ、うん。六、五、ゼロ、xxxxxxx。祥平の番号も教えて!」

Four one five xxxxxxx。」

「それからノート、ありがとね。」

「あ?ああ…。」

 

ノートに書いてあった記号について聞いてみた。

 

「あのばつまる、ばつまるってどういう意味?」

「え?」

「ノートの最後にばつとまるの記号書いてあったけど…。」

「ああ…エックス、オー…キスとハグ。」

「そーなんだ。ふーん、知らなかった!」

 

クスッて祥平が笑って言った。

 

「ちぇ、俺、今すっごいキスもハグもしたい…。」

「お、俺も!」

「土曜日空けとけよ。俺もう行かなきゃ。」

「うん、じゃあね。」

 

(はああ…キス、ハグかー…ヒヒッ。おっと携帯、携帯どこだっけ?)

 

めったに使わない携帯が見つからなくて、結局電話して音源を探し当てると、ジャケットのポケットに突っ込んであった。早速祥平の番号を登録して、

 

…ついでにアキの番号を消した。

 

いつもの暇な週末が一転して、その日曜の午後は大忙しだった。家中の掃除をして、1週間分の服と昨日のままのシーツを洗濯機に突っ込み、アキのトイレの砂を変え、ゴミを分別して捨てる。

 

忙しかったけど気分は上々で、俺は鼻歌を歌いながら、調子良く用事を片づけた。

 

その週は会社でもやたらハイで、嫌いな上司にも、気に入らない同僚にも温かい気持ちで接することが出来てしまった。

 

(こいつら感じ悪いのはきっと家庭が面白く無いからだよな、可哀想な奴等。)

 

なーんて…ついこの間まで自分が不幸の固まりだった事は棚に上げてこの余裕。自分でも笑ってしまう。

 

「週末はどうだった?」なんてただの挨拶で、いつも「まあまあ。」しか言わない俺から返事を期待してない同僚達は、「すっごいいい週末だった。」って言う俺の満面の笑みにびっくりしてた。

 

「彼女でも出来た?」って聞かれて、「さあ?」とか嬉しそうに返事したりして。

 

祥平からは毎日メールが届いた。大した事を言ってくるわけじゃないけど、やっぱり嬉しい。俺も速効で返事して、バツ丸マークもくっつけた。早く会ってエックスもオーもしたい…。

 

金曜日は早起きして7時に会社に着いてしまって、カード・キイでドアを開けた。

 

(今日は早く帰って買い物に行っとかないと。)

 

祥平にメールを入れて、何か買っておいて欲しい物があるか聞いておいた。

 

金曜は大抵仲良くしてる同僚とランチに出かける。今日も会社から少し遠いけど、皆のお気に入りのベトナム料理の店に行った。ヌードル・スープの専門店で、一度食べると嵌まってしまう味。

 

フィリピン人の女の子が彼氏の自慢話をするのを皆でからかいながら聞いた。年上の彼は両親のビジネスを手伝ってて、将来有望らしい。でも、中国人のおばさんはイギリス人の旦那と離婚してて、結婚とかリレーションシップ、恋愛に対してすごくシニカルだ。2世の男の子も両親が離婚してる。

 

ほんと、結婚だって10年も持てば長続きした方だって言われるもんな。「アキはどうしてんのかな?」ってチラッと思った。もう二人目の子供が出来てたりして…。

 

ぼんやりしてると、急に中国人のおばさんが俺に話を振った。

 

「新しい彼女はどんな娘?いつ知り合ったの?日本人?アメリカ人?」

 

悪い人じゃないんだけどこういう所は日本人のおばさんと変わりない。

 

「いやー、まだ会ったばっかりだし…。」

 

って適当に話をごまかしてたら、おばさんに真面目な顔で言われた。

 

「ケーゴは彼女が出来たら大事にしそうよねー。」

 

フィリピン人の女の子と2世の男の子がウンウン肯いた。

 

俺ってそういう風に見えるのかな?まあ一応一人の相手を守り抜くタイプであるとは思う。

 

それで相手に逃げられるからウザイだけかもしれないけど…。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

ランチを食べてオフィスに戻ると、祥平からメッセージが入ってた。

 

“携帯に掛け直せ。”

 

早速、祥平の携帯を鳴らしたけど、繋がった途端、

 

DiiaaaaaiiiiaaaaaaahhhaaaaH*

 

馬鹿でかい叫び声がして思わず受話器を耳から離した。何回掛けてもこの着メロには慣れない。そのうち祥平の声で、

 

Yeap!  Go ahead and do what you need to do.

 

って言うと、やっとビーッて鳴ったから、

 

「俺、敬吾。携帯出れなくてごめん。午後はオフィスにいるから会社の番号に掛け直してくれる?えーっと、六、五、ゼロのxxxxxxx。じゃあ。」

 

ってメッセージを残しておく。しばらくするとデスクの電話が鳴った。

 

「ハロー?」

「俺。買っといて欲しい物言うからメモして。」

「あ、うん。」

「じゃあいい?」

「オッケー。」

「ユーカン・ポテト、ズッキーニ、イエロー・オニオン、ブラウン・マッシュルーム、ガーリック、キアンティ、これは料理に使うやつだから安いのでいい。それからアレグラ、スプラウツ、レッド・オニオン…。」

 

いきなり野菜の名前を連呼されて、俺は焦ってカタカナでとりあえず全部書き留めた。聞いた事の無い野菜もあって何回か聞き直した。

 

「分かった?」

「うん。もし分かんなかったら店員に聞く。」

「サンキュー。んー、チュッ!明日な。」

「う、うん。じゃあ。」

 

そう言って電話を切ろうとしたら、

 

「俺にもキス返してよ。」って。

 

「…会社だから。」

「冷たいなー、敬吾。」

 

そう言われて、「チュッ」て受話器に小さくキスの音を返すと、祥平がクスクス笑いながら電話を切った。

 

そのままデスクに横向きに倒れ込むと、俺は小さくため息を吐いた。

 

(…好き…すっごく。)

 

ブレーキを掛けるべきなのかな…自分の気持ちに…。

 

付き合おうって言われたわけじゃない、好きだって言われたわけでもない。まだそんな事聞けるような関係じゃない、と思う。

 

でも、どうしようもなく惹かれていくのを止められない…。

ライン ドット

*Copyright by James Brown "It's too funky in here

こんなんで著作権の表示とかいるんでしょうか?でも、一応。

それと、すみませんカタカナだらけで。適当に読み飛ばして下さいね()

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